とある音屋の日常 「C3PROJECTスタッフBlog」

サウンドミキサーが選ぶ「迷ったら聞くリファレンス音源」

2024/01/22
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音を仕事にしていていろんな現場へ行くと、現場ごとに空間の環境が違うのでどういう音が正しいのか混乱してしまったり、音を聴き込みすぎて耳の感覚がゲシュタルト崩壊したときなど、ミキサーとして音のキャンバスを一から再構築する必要があるときに頼る音源が「リファレンス音源」です。特にこれでなければいけないという決まりがあるわけではなく、各ミキサーそれぞれに自分の好みと価値判断でリファレンスを持っています。

私は大学在学中の2000年にPA会社でのアルバイトを始めたのが音の仕事のキャリアのスタートで、そこの一番えらいミキサーがサウンドチェックで使っていたのが Donald Fagen の「I.G.Y.」でした。当時なんにもわかってないピヨピヨの僕が「なんでこの曲をいつも使うんですか?」と質問すると面倒くせぇなという顔をしながらも「ローからハイまでバランスよく音が入っていて、チェック時に大きな音で流しても他部署の邪魔にもならず、関係ない一般人に聞こえても耳障りにならない無難な曲だから」と教えてくれ、ああナルホド!と大きくうなずいたものです。しかし「I.G.Y.」は当時のPAミキサーの定番リファレンスとしてはかなり人気でしたね。最近のPAミキサーのリファレンスって何なのでしょうね。コメントで教えてくださると嬉しいです。




Donald Fagen 「I.G.Y.」 >>YouTubeで聴いてみる
PA屋といえば・・・というくらい定番のリファレンス音源。2024年の今に聴いても1982年の曲とは思えないほどのクオリティで、当時のPAエンジニアがこぞってリファレンスにしたのも頷ける一曲。むしろ音が飽和した今の曲よりいい音であるのは間違いない。
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Earth, Wind &  Fire 「September」 >>YouTubeで聴いてみる
タシッ!と決まるドラムの音作りが素晴らしく、楽曲ミックスの土台となるベースとドラムのバランスの教科書だと思う。音が飽和しておらず伸びやか、全体にドライな音作りでの楽器の定位感など基本中の基本が詰まってる。ブラスの音の処理、EQやコンプの適正なかけ方、パンニング、ミックスバランスなど音作りの殆どはこの曲を参考に学んだ。
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BB MAK 「More Than Words」 >>YouTubeで聴いてみる
ロックバンドExtreamの同名曲をBB MAKがカバーした曲。BB MAKは3人組ボーカルグループで、紹介する「More Than Words」は2000年発売の日本版デビューアルバムにのみ収録された曲だったが、2021年にベストアルバム(配信リリースのみ)で世界リリースされた。アンプラグドな楽曲のリファレンスとしてアコギ2本と3人声のハーモニーが本家よりも素晴らしくオススメの一曲。
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Eric Clapton 「Blue Eyes Blue」 >>YouTubeで聴いてみる
AORの最高峰の一人、クラプトン御大の曲なので言わずもがな最高音質だが「Change the world」をサウンドチェックでかけるのはあまりにもニワカすぎて小っ恥ずかしい。そんなときこの「Blue Eyes Blue」をかけてほしい。アコギのスチール弦の繊細かつ豊かな響きと空間と、分離のいい低音のバランス、ボーカルの存在感、ストリングスの広がり・・・など、最高峰のサウンドエンジニアリングを感じられる。
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Eric Clapton 「Foever Man」 >>YouTubeで聴いてみる
程よくコンプレッションされつつもダイナミズムを失なわず、音が生き生きとしたロックな曲の基本がここにも詰まっていて、聴き飽きないパーカッションやコーラスのバランスや、曲中のギターリフや間奏のギターソロの音などを聴くと音作りの基本が見えてくる。大サビ終わりのフロアタムの深みのある音がすごく良い。音の構成のピラミッドに迷いが出たときはよくここに答えを探しに来る一曲。
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Dua Lipa 「Hallucinate」 >>YouTubeで聴いてみる
デュア・リパの声を耳障りにならない絶妙なディストーションでまとめているミックスの技がすごい。しかもトラックメイクがとにかくかっこいい。キレのある低音といい、現代的な音圧あるミックスでありながら全く音が団子になっていないミックスといい、ぐうのネも出ない曲。ちなみにMVがカートゥーン調のアニメでデュア・リパを描いているのもポップで面白い。
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Boz Scaggs 「Simone」 >>YouTubeで聴いてみる
ボズ・スキャッグスもまた古いながら今聞いても全く古さを感じない名曲揃いだが、1980年でこの楽曲クオリティである。2024年の音楽シーンのミキシングは退化してるのかな・・・?と思うほどの音の良さ。個人的には2023年のリマスター音源よりも1980年のオリジナルの音源のほうが音が良いと思う。2023年リマスター版はオリジナルよりドライな音になっていて、音の広がりが感じられない。ぜひ聴き比べてみてほしい。
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Starship 「Nothing's Gonna Stop Us Now」 >>YouTubeで聴いてみる
1987年のキラキラなバラードポップス。曲自体とにかく全体的にリバーブびたびたで気持ちいい!リバーブのかけ方と、これ以上はあかんというリバーブの限度を確認するときのリファレンス。ポップスらしい比較的トータルの音圧高めの曲だが、前述の通りリバーブのおかげで伸びやかに聞こえる。強めのリバーブをかけるときのお手本として。僕の好きな映画「マネキン」のテーマ曲でもある。古き良き80’s POPSの代表曲。
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Police 「Every Breath You Take」 >>YouTubeで聴いてみる
これもドラム、ベース、ギター、キーボード、ボーカルというシンプルな構成で、音が飽和しておらず、空間が見えるような音作りがとても美しい。スネアのゲートリバーブ感や、ベースの音作り、キーボードのバランスがすばらしく、スティングのボーカルにかかる自然なリバーブ感など「空間を埋めていく音の作り方」という面で非常に参考になる。
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10cc 「I'm Not In Love」 >>YouTubeで聴いてみる
1975年の録音でこのクオリティである。山下達郎氏の楽曲制作手法にもつながるとにかく何度も重ねるオーバーダブでの「圧倒的な音の壁」の原点ともいうべきコーラスワークの美しさが特徴。ぱっと聴いた感じものすごくハイファイなように聴こえるが、よく聴くと結構ローファイで至る所で歪んでいたり、ワウっていたり、音がガサついていたりと、なぜ?!と考えてしまう不思議な要素がたくさんある。いい音の本質とはなんだろうと考えさせられる音作りの曲。
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Philip Bailey&Phill Collins 「Easy Lover」 >>YouTubeで聴いてみる
ドラムの音作りのリファレンス。スネアのスッカーン!という音とタム回しの音のバランスなどがすごく参考になる。またベースとドラムの音のからみが素晴らしくソレだけで楽曲が成立するくらいのクオリティなので、インストのミックスをする際の参考にすごくよい。
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Ed Sheeran 「Overpass Grafitti」 >>YouTubeで聴いてみる
a-haの「Take On Me」をどことなく彷彿とさせて、どことなく80's POPS感の漂う曲だけどバリバリ最近のエド・シーランの楽曲。現代的なサウンドでありながら80'sの伸びやかで、広がりがあって、ハイファイな感じのある素晴らしい曲。現代でびたびたにリバーブを掛けたときにかっこよく仕上げるには・・・?というときに参考になる。あとMVの最後の方で何故か相撲取りらしきキャラが「久しぶりだなカワイコちゃーん!!」と謎のやり取りがあるので意味わかんなくて好き。

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Daft Punk 「Voyager」 >>YouTubeで聴いてみる
低音の出方のチェックにはこれしかない。超重低音も入っているのでウーファーの調整やPAのシステムチェックに最高。サウンドチェックに使った後、客入れの最中にループしてても違和感のないサウンドなのもいい。PAを自分で組んでこの曲で音出しをしてこの曲がキレイに聞こえなかったら失敗だと思っていい。低域のこもり感、ステレオの広がり感が出ないなどであれば、FOHスピーカーの設置位置の調整やチャンデバやシステムコントローラなどで位相調整などをしたほうがいい。
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