とある音屋の日常 「C3PROJECTスタッフBlog」

往年の名機「AURATONE 5c」のようなものをDIYで作る

2023/11/05
音響機材関連 0
レコーディングスタジオやMAスタジオ、放送局などに長年勤めている人には「あー、アレねー」とおなじみの枯れた定番機材の一つ「AURATONE 5c」というモニタースピーカー、覚えてますか?

私がスタジオに勤務し始めた2000年初頭でも、置いてはあるけど音を出せる状態にはないとか、スタジオの物置場に打ち捨てられていたりという可哀想な扱いを受けていたAURATONE 5c。
元々はAURATONE 5C Super Sound Cube として1960年代にAURATONE社が発売したフルレンジスピーカーで、卓越した中音域再生と信頼性から、録音スタジオや放送スタジオで非常に人気を博しました。
特性としてはほとんど中音域しか再生できないので、低域の量感や、高域の空気感などは全くわかりませんが、とにかく人の声のあたりがよく聞こえるスピーカーなので、ボーカルやナレーション、重要な楽器パートのステレオの定位、奥行き感の確認、MIXの検聴には大変便利でした。

▼結構古いオリジナルのAURATONE 5cの写真(この画像はWeb上から拝借しました)
auratone_org.jpg
1999年に大学生になって所属した大学の放送部のスタジオにもスモールモニターとして置いてありましたが、古いAURATONE 5cあるあるで、スピーカーエッジがネッチョネチョになって、そこに埃がくっついて見るも無惨に小汚い有様。だれもAURATONEを使おうなどとは思わない状態。よく指導で来るOBに「これは放送局とかスタジオでは定番のスピーカーだ。人の声がよく聞こえて家庭で聴く音に近いので、AURATONEで聞ける音にすることは重要。」と教えてもらったのがキッカケで自分の中でAURATONE 5cという存在が定着しました。

しかし、同じフルレンジスピーカーという土俵にあるBOSE 101などと比べると、あまりにお粗末な音質に当時から今まで全く興味の湧かないスピーカーではありました。私自身フルレンジスピーカーが非常に好きなので、大学時代からBOSE 101や111、WestBorough121などのフルレンジスピーカーを愛用しているのですが、とてもではないけどAURATONE 5cの音が良いとは思ったことがありません。私の中ではAURATONEといえば出す音が聞こえるかどうかの判別程度しかできないという意味で「クソモニ」というかわいそうな愛称を付けて呼ぶスピーカーでした。

そうこうして現在2023年。

極薄の液晶テレビが当たり前の家電になり、液晶テレビのさらなる薄型化・小型化の邪魔となるのはスピーカーになりました。スピーカーに割くサイズの割合が圧迫され続けた結果、テレビのスピーカーはどんどんと貧弱かつ薄っぺらくなってきました。最近では薄さ30mm程度のテレビ筐体もザラになり、バスレフ効果も得られないので、液晶テレビ内蔵のスピーカーでは150Hz以下は実質ほぼ聞こえないのが実情です。

そうなると私のようなMAミキサーも家庭で聴く音を意識してミキシングをしないといけなくなりますが、そこで今こそ「クソモニ」であるAURATONE 5cが欲しくなったワケです。

しかしながら「クソモニ」と呼んで可愛がっている低性能なスピーカーのくせに、AURATONE 5cを現在新品(若干のモデルリニューアルはされている)で買うと、クソモニのくせにペアで6万を超えてしまうのです!!!(白目)

▼サウンドハウスで2023年10月現在、62,150円。クソモニに6万はとても出せない・・・
SOUNDHOUSEAURATONE 5c



そこで貧乏人は自作します。
DIY精神です


材料は全部ネットで買えます。今回私はトータルで6000円で作れました。道具もあれば便利なものはいくつかありますが大したものは不要ですので今回のご家庭でも作れる「AURATONE 5cもどき」のレシピを置いておきます。

▼今回の最終的な仕上がり。本家オーラトーンよりコンパクトでいい感じ。
modoki1.jpg

今回はあくまでも「もどき」として、オリジナルのAURATONE 5cよりも一回り小さく作って、デスクトップに置いても邪魔にならないサイズにします。というのもオリジナルのAURATONE 5cは一辺約16cmの立方体に11.5cmのフルレンジユニットで、スタジオに置いてあると小さな印象ですが、一辺16cmのスピーカーは自宅の卓上に有ると結構デカイです。みなさんも自作する前に模造紙とかで16cmの立方体を作って机の上に置いてみてください。「でけぇ・・・・」となって結構ビックリします。

ということで、一辺10cmの立方体にフルレンジ8cmのユニットを収めたAURATONEもどきをDIYします。



【材料と道具と予算】
普段からDIYをやる人はだいたい道具や細かい材料は家に買い置きしているもので済みますので、そういう人は5000〜6000円くらいで2日あれば作れます。
エンクロージャーやユニットなどの主要材料以外はほとんどはホームセンターで買えますしそのほうが大体安いですが、いちおうこういうやつだよって意味で参考リンク貼っときます。


スピーカーエンクロージャーのカット済みキット(Ukigokeさんが下記で販売中)
今回は5.5mm厚MDFの 1010J (800円)を購入し製作。バッフル穴径もオーダー可能です。
非常に精度良くカットされたMDF板のキットなので初心者でもほぼ接着するだけ。
https://ukigoke2016.wixsite.com/mysite

FOSTEX 8cm フルレンジスピーカーユニット ペア(4400円)
音質とコストと信頼性のバランスが最強。何よりFostexという安心感。
https://amzn.to/3QPHpaq

スピーカー ケーブルターミナル
それなりの適当なやつでそれなりの見栄えのいいやつ。金メッキ推奨。

内部配線用スピーカーケーブル
なんでもいいし、こだわりたければモンスターケーブルとかでも。

六角アプセットボルト M4x12mm 黒(八幡ネジ製を推奨)合計8本必要
ユニットの取付用。機能的にも見た目的にもこれが一番カッコいいと思う。

M4ナット 合計8個必要
ボルトとナットは忘れずにセットで買わないとね。

スプレー塗料(白)速乾性ラッカー つやあり
https://amzn.to/3QsTe5b

水性ニス ウォルナット
バッフルをウォルナット風の木目に似せて渋く着色するため使います。
https://amzn.to/476burZ

Fクランプ
エンクロージャー接着の際に必須です。今回は150mmまで挟めるやつをオススメ。
https://amzn.to/3QRbCpF

木工ボンド 速乾性50g
昔っからある木工ボンドだけど今回は速乾性がオススメ。
https://amzn.to/3FP23Bk

木工パテ 70g
接着後の隙間とか材料木口の目地埋めて塗装乗り良くするのに使う。
https://amzn.to/47rwdXk

紙やすりセット
https://amzn.to/469a6Ua
使うのは60〜300番くらいでいいと思う。

マスキングテープ
接着時の仮固定とか塗装時のマスキングに。
https://amzn.to/3shJq69

穴あけドリル φ3.5mm
バッフルにユニット取り付けるボルト穴をあけるのに必要。

半田ゴテとハンダ
スピーカー内部でターミナルとユニットの配線しますので圧着派以外の方は必須です。



一応、製作過程のような写真など。

▼ユニット開封の儀。バッフルとユニットの間に挟む気密ガスケットと木ネジも同梱されてます。
(かっこよく仕上げるためダサい同梱の木ネジは今回使いません。)

▼取付位置を現物合わせでマーキングしてボルトの下穴をあけて仮組み確認

▼その後バッフル板にニスで塗装。一方向に塗り伸ばすことで木目調になるようにする。
MDF(集成材)なので本来木目がないので、ニスを塗り伸ばす際に木目模様を作る感じです。

▼薄く3回もニスをかけるとMDFでも深みのある感じに仕上がります。

▼ニスを塗った後、蜜蝋でオイルフィニッシュして高級感のある仕上げに。

▼ターミナルの取り付け。固めに締め付けないとターミナル自体が回転してしまうので注意。

▼ターミナルに内部配線をハンダ付けしてエンクロージャーのパーツを接着。

▼マスキングテープで仮固定しつつ接着し、クランプや重石で固定する。

▼接着完了。持つ手と比べると一辺10cmのサイズ感がわかると思う。

▼下地塗り終わりの状態で仮組み。見た目は完全に一回り小さいAURATONE。
 音も理想的なクソモニらしい元気で中音域が元気な非常に楽しいスピーカーになった。


この状態で塗装以外すべて完了していて、仮組みながら音出すとフルレンジらしいまとまりの有る音で、fostexの安心感もあるし、定位感もよいし、明瞭度の高い音で、元気も大変良い素晴らしいクソモニ(敬意と愛情を込めてクソモニと呼んでいます!)に仕上がっています。本物のAURATONEが手元にないのですが、聞いた印象はAURATONE同様に中音域のモニタリングに適した明瞭度、解像度、レスポンスがあって、実際にMIX作業時のスモール確認用として信頼して使えるレベルだと思います。

ぶっちゃけ液晶テレビサウンドを確認するうってつけのクソモニ以上に仕上がってしまい、これで音楽を聞くのが楽しくて仕方ない状態です。Earth Wind & The FireのSeptemberのような70年代ディスコサウンドや、今々のJPOPを聞いてもとても元気よく明るく鳴ってくれるので作って良かったなぁと思っています。


【追記2023.11.27】
 塗装は当初、エンクロージャーを白で仕上げようと思っていたのですが、仕上がりの高級感とかプロっぽさを優先して、黒のストーンチッピング塗装にしました。チッピング塗装は表面にザラザラとした粗目の凹凸が生じる塗装で、プロ用音響機材、特にPA機材なんかの塗装にはよく見かけるものです。ホームセンターでもスプレー缶塗料のコーナーで何種類かのチッピング塗料が売っているので、その中でアサヒペンのストーン調スプレー(ブラックストーン)を今回は使いました。
薄くサッと数分間隔で4回ほど吹いて仕上がりました。

 スプレー塗装のコツは「パーツの組み合わせ部の凹凸処理と隙間埋めは完璧に」「最低でも20~30cm離して吹く」「吹き始め・吹き終わりは対象物に当てない」「一回で塗りきろうとしないで複数回の重ね吹きで完成を目指す」こと。吹き始め吹き終わりは塗料がダマになって対象物に付着しやすいので絶対に当てないこと。吹きムラになりやすいです。そして慣れないうちはなるべく遠くから吹くこと。近くで吹くと霧状に付着せずに塗料がダレて汚くなります。キレイに仕上げるには1度で塗り切るのは絶対に無理なので薄く吹いて乾いては吹き、乾いては吹き・・・を数回やる方がきれいになります。

▼塗装仕上がり。パーティングラインもキレイにパテ埋めしたのでほとんど見えない。
modoki3.jpeg
▼実物は写真で見るよりはマットな質感。テカテカしない石目の黒で高級感ある感じ。
modoki2.jpg




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