ZOOM F8シリーズの衝撃

2023/07/08
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録音部 ZOOM 映像制作 同録 音声さん
またしばらくぶりの更新になっていまいました。

ちょっとしたご報告ですが、弊方の録音機材である「ZOOM F8」を機材更新し、「F8n Pro」を新たに導入いたしました。

ZOOM F8はレコーダーとミキサーが1つになったマルチトラックフィールドレコーダーで、文字通りレコーダー(録音機)とミキサー(調整機)なので、これがないと仕事にならない大事な機材です。

今日はそのレコーダー ZOOM F8シリーズの衝撃を今更???と言われても書くという回です。

▼ロケ中、腹にF8抱えた自分視点。F8は入力が多いのでロケでもいろいろ便利。
IMG_1909.jpg



C3PROJECTでは録音部業務としてCMやドラマ撮影などの同録を行っていますが、そうした同録の現場で音を調整・録音するための道具であるミキサーやレコーダーについて、しっかりと信頼できるもの選ぶのは当然のこと。同録現場の厳しい使用要件に耐える録音機器、特に「レコーダー」は今でも選択肢はそう多くないが、2000年を超えても、つい10年ほど前は本当に選択肢がなかったのだ。

需要はあるのに満足な機材が出てこなかった理由としては

1 記録メディアの容量と信頼性
2 機器の小型・軽量化が困難
3 消費電力の問題
4 タイムコード同期の需要の特殊性
5 ニッチすぎる市場規模

この5つがこんがらがっていたように思う。

1〜3の課題についてはハードディスクからメモリーメディアへの移行や、電池性能の向上、半導体技術の向上といった技術の恩恵によってクリアされ、4と5については、映像制作の裾野が拡がったことで音にも関心が寄せられるようになり、ようやく製品に反映されて世に出てきたのだろう。

当時国内メーカーではTASCAM HS-P82やRoland R-88が8ch録音可能なポータブルマルチトラックレコーダーを発売したが、コストの割に機能性能ともにイマイチどころかイマみっつ、よっつ・・・という有様。
海外メーカーでは2005年発売のAATON CanterXや2008年発売のSoundDevices788などの素晴らしい選択肢があるものの、めちゃくちゃ高価である。AATONなどは2万〜3万ドルするしSoundDevices788の最廉価のモデルでも本国で6000ドルほどで、日本代理店を通すとお値段の桁が変わるレベルで実質買えない。結局国内メーカーで満足な性能のものは出なかった。

そんな状況ではあったが、この頃DSLR撮影向けにPCMフィールドレコーダーが小さなブームとなって、SONY、TASCAM、Roland、ZOOM、Marantzなどが様々な製品を投入してきた。いつの間にかハンドヘルドサイズの本体にXLR端子とファンタム電源を装備するようになり、高機能化の兆しを見せはじめ、2013年にZOOMはH6というハンドヘルドサイズながら多チャンネル入力可能なマルチトラックレコーダーを発売し、そのまとまりの良さや音質で音屋界隈をザワつかせはじめる。

そしてついに2015年、ZOOMが8chマルチトラックフィールドレコーダーとしてF8を発表、24bit 192KHz で 8in 4out、8トラック同時記録可能でタイムコード同期が可能という現場用レコーダーとしてパーフェクトな製品で、値段が実売16万円ほど。

この衝撃はすごかった。

国産ロケーションミキサーの標準だったSIGMA SS-302と同等のサイズ感で、しっかりとした金属ボディで頑丈。本体の単3電池と外部電源での電源二重化、記録はSDカードの2枚挿しで正副記録できて、Bluetooth接続でスマホやタブレットからワイヤレスコントロールもできる。しかもUSB接続で大型のフェーダーユニットを使ったり、オーディオインターフェースとしても使えるという多機能っぷり。入出力のルーティングが非常に柔軟で、録音するだけでなくカメラ送りやディレクター用MIXなども自由にこなせる万能ぶりはもはや異次元で、ケチのつけようがない製品だった。
そして何より音質が良かった。HAはクセがなくローノイズでハイゲイン。ヘッドホンアンプも十分に大きな出力を持っていた。

これまで国内メーカーではTASCAMやRolandがこの手のレコーダーの製品化にチャレンジして大コケしている中、予想を超えるレベルで完璧な製品を出してきたのである。




【閑話休題:F8以前のミキサー・レコーダー】

▼SIGMA SS-302 国産のロケーションミキサーといえばこのシリーズ

音質はみっちりとしたアナログ感の強い音で、象が踏んでもいいくらい頑丈で信頼性が高いくて、日本にはこれで育った音声さんがたくさんいる標準機。目を閉じてても触った感触で操作ができる造りだったり、半埋没で硬めの操作子は意図せず動いたりしない安心感がある。個人的にはSS-302の安心感が全ての基準になる。

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▼TASCAM HS-P82 まぁまぁ良かったがやっぱりいま一つだった。デカい重い。
スイッチ類が大雑把すぎた。タッチパネルも誤操作の元だった。入出力端子の並びが普通の感覚とは逆の並びというバカ仕様。忙しい現場で抜き差しするとミスる。
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▼Roland R-88 兄弟機のR-4Proを使っていたがなかなかダメなシリーズだった。
ボディのいたるところがプラスチッキーでヤワ過ぎてケーブル抜き差しするたびにぶっ壊れそうな不安感。ツマミは折れそう取れそう、ボタンやディスプレイは視認性操作性共に悪く、機能面でも開発者出てこいオラァ!って感じだった。
ちなみに兄弟機のR-4Proを実際使っていたときの私のレビューがコチラ↓
今読むと結構けちょんけちょん。ぜひお読み下さいw
Roland R-4Pro をSSD化改造しました。 http://c3pro.blog11.fc2.com/blog-entry-294.html
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▼AATON CanterX トヨタ・プリウスが余裕で買えるお値段。
とにかく高い。値段が半端ないので庶民は買えないし、業界でもユーザーは多くはない。AATONはフランスのメーカーで、いわゆるヨーロピアンデザインと言うやつだろうか、やたらゴテゴテ主張が激しいのはイタリアの銃器メーカーBerettaの有名な92Fのデザインに通じるものがある気がする。(なNAGRAのテレコの操作体系に近い)
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・・・さて話を戻して、失礼ながらそれまでのZOOMというと、ギタリスト向けのエフェクターやミュージシャン向けのMTRを作っていて自分には関係ない特段パッとしないメーカーだと思っていた。そんなイメージのZOOMから革命的な製品が出たことにも驚いたが、さらに凄かったのは発売後の熱心で継続的なサポートだった。
ZOOM F8は無償のファームウェアアップデートでどんどん機能を追加・改善していき、2018年に後継機種「F8n」が発表されてもなお、ファームウェアアップデートで初代F8と新機種F8nでほぼ同等の機能を提供するという、まさに「神」がかった手厚いサポートを施し、がっちりと現場のユーザーの信頼を掴んだ。ファームウェアアップデートで実現される新機能と改善があまりにも手厚すぎて、後継機のF8nに買い替える理由を失ってしまうほどだったというのは言い過ぎではなかった。

▼初代F8:左と新しくきたF8nPr:右を並べてご満悦。見た目は全然変わらない。
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そのサポートお陰で、初代F8と後継のF8n / F8nProで実務上の差はほとんど無い。これはいかに初代F8の完成度が高かったかという証でもある。    主な違いはメイン出力で+4dBuが出せるかどうかくらい(初代F8では基準レベルで+4dBu出せない)で、カメラ送りを要求されることもめっきり減った昨今では買い替える理由にならない。またF8nProの売りとなる32bit floatの恩恵も録音部としては録音は技師に管理されていてナンボなので特に必要はなく、やはり買い替える必要がない。(とはいえやはり32Bit Floatが個人的にもいつか役立つ日は来るはずとは思っている)

じゃあなぜ買い替えるのか。

もうこれは国内メーカーであるZOOMが海外メーカーに負けない素晴らしい製品をリリースしたことへの応援でしかない。株を買う気持ちに近い。

実際、自分の心が踊るような音響関連の新製品というのは、この数年でいうとF8シリーズ以外ではそう多くない。ZOOMにはこれからも海外メーカーに負けないで、現場が求めるレコーダーを作り続けてほしい。なんならZOOM公式でレビューでも評価でも何でもお手伝いしたいのでZOOM様よろしくお願いします。あと、国内需要より海外のほうが売れるからといって海外販路にばかり製品回さないで、国内在庫の確保もよろしくお願いしたいです(知らんけど)


C3PROJECTはCM、VP、映画など映像作品の同録録音部業務から、整音・MAまでワンストップでお任せいただける音専門の技術プロダクションです。
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