たまには現場録音のレポートを

2022/02/16
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Protools 映像制作 録音部 レコーディング
C3PORJECTの現場は、撮影の同録から、スタジオでアニメや吹替の収録、バラエティ番組やCMのMA、生配信の音声や中継音声の技術、ライブのPAまで多岐にわたり、音の仕事でやれないことは殆どありません。

以前はそうした現場のレポート的なこともよくブログ記事にしていましたが、手軽なTwitterに毒されてここ数年そうした記事を書いていなかったように思います。(一時、白内障で目を悪くして画面を見続けることが辛かったのも一因です)

今回は久しぶりに「こんな現場録音してきたよ」というレポート記事です。

案件名などは伏せておきますが、仕事のミッション要件としては

・アーティスト数組の短いMV(ミュージックビデオ)案件。
・古民家の雰囲気の中、アーティストが生演奏する映像。
・その場で演奏している雰囲気を重視した録音。
・映像と音の雰囲気が合致していることが重要。
・ただし音は一発録りではなく、スタジオ録音同様パートごとに収録し・・・
・アーティストにはクリックや演奏の返しやプレイバックも聴かせて・・・
・その場でMIXしプレイバック。それに合わせて映像撮影する。

というもの。

この要件をクリアするには単に録音機を回すだけではなくてMIXや編集が必要なため、録音スタジオ同様「Protools」を現場で回すしかないので、モバイルProtoolsシステムを持ち込みました。


▼ 今回のシステムプラン図 即応できる柔軟さのためアナログミキサーを使用。 
DiagramLiveRec0206.png


ミッション要件として単純に理解するならば「音楽レコーディングスタジオでやってることをロケ地の古民家でもやらなければいけない」というものなので、それなりのプランと物量が必要となりますがその結果が上記となります。
まずシステムプランで考慮しなければいけなかったのが
・コロナ事情のため録音部はワンマンオペレーションであること
・ワンオペでも運搬できる機材量と、必要な条件のバランス
・MV撮影もあるので、限られた時間と専有面積で設置できるコンパクトさ
・アーティストサイドからのあらゆる音の要求に柔軟に対応できるシステム
・アーティストへの「返し」のレイテンシーの問題
上記のような点を考慮してプランを組みました。
その結果、現場ではこんな感じでセットアップされました。


▼ モバイルProtoolsシステム。カートごと移動できるので便利。
IMG_18560206.jpg

▼ 先程とは違う部屋へ移動。カートなので非常に楽に移動できる。
IMG_1858.jpg


カート乗っている機材については下記のような構成。

【カート最上段】
・MacBook Air
・ZOOM F8(USB Audio Interfaceモードで利用)
・BOSE M101(ステレオ再生するので2発)

【カート中段】
・Mackie 1604VLZ Pro

【カート下段】
・BOSE 1706(101駆動用アンプ)


今回のシステムではアナログミキサーの Mackie 1604VLZ Pro を使って音の出入りを管理している。出力系統が柔軟で1ST/4BUS/4AUXと豊富で音質的にも申し分ない。今回はHDXカードを使うProtoolsシステムを持ち込んだわけではないので、問題になるのがレイテンシー。事前の運用テストではPlaybackEngeneのバッファーを64サンプルにして48KHz/24bitの録音で4ch同時録音でもエラー停止などはしなかったが、念の為128サンプルで運用した。128サンプル(約0.0026秒)なので遅れというよりは位相ズレだが、脳は位相変化に敏感なので、音楽系で音に敏感な人は嫌がる人が多くなってくる。そのためアーティストの演奏や歌唱の遅れると気持ち悪い音の返しはカート中段に据えたアナログ卓から直接送っている。

もちろん1604でシステムを組んだ理由はそれだけではない。アナログミキサーを使うことでサッとEQをかけたり、録音や各送りへの音量調整も行える。いちいちプラグインを起動して画面でチコチコやってる暇のない現場では、アナログ卓の時間的な優位性は心強い味方になる。そこにあるツマミとフェーダーを弄れば待たせず結果を出せるというのは、こうした時間に迫られる現場では間違いない強さである。


写真左に写るHAなどアウトボードについては上から

・Universal Audio 4-710D
・Nightpro EQ3-D
・AMEK 9098 DMA
・AMEK 9098 CL


今回は4-710DをHAとして全ての音を録音し、場合によって9098CLをインサートして使用するスタイルをとりました。
4-710D は4chのプリアンプですが、各チャンネルに1176タイプのコンプを内蔵していてゲインに応じてコンプをかけることが可能。面白い機能としてはHAの味付けに真空管とトランスの回路を自由に比率をブレンドして通すことが可能な点。今回はギターなどには真空管、ボーカルにはトランスの味付けで録音を行った。

ちなみに今回の案件では「古民家で歌っている空気感」を映像とともにしっかりと伝えたいという意向があったため、収録した古民家各所でのインパルスレスポンス(IR)も収録した。IRを収録しておくことでリバーブプラグインで響きの再現が可能になり、TDやMA時にこれを活用できるためだ。


▼ ステレオで部屋のインパルスレスポンスを収録している様子。
IMG_1862.jpg IMG_1861.jpg


ちょっと変わった収録現場でしたのでご紹介しましたが、今回の収録では他にもいくつか考えていた
案があり、SENNHEISERのAMBEO VRというVR専用マイクを使うことも考えました。AMBEOは360度あらゆる方向の空間の響きを非常によく収録できるマイクなのでぜひやってみたかったのですが、予算やシリーズでの収録だったため他との整合性を考慮して見合わせました。

このようにC3PORJECTは複雑な収録や、機動性の必要な録音など、あらゆる音の現場で最適なプランをご提供できるサウンドプロダクションです。音についてのご相談がある方はぜひお気軽にC3PROJECTまでお問い合わせください!


▼ C3PROJECT お問い合わせなどもこちらからどうぞ!
http://c3project.jp/


おまけ写真。今回の現場への積み込み。座席も満載。翌日尻が筋肉痛でした。
IMG_1852.jpg

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