「DDPマスター」についての話

2020/07/23
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久しぶりの更新となりました。

C3PORJECTの中の人です。


今日はC3PROJECTでも取り扱っている「DDPマスター」についての話です。

(C3PROJECTではCDプレス工場にDDP入稿可能なデータを作成可能です。DDP作成でお困りの方はぜひ弊方のDDP作成サービスをご利用下さい。)




長らくCD制作の現場では、プレス工場で最終的にCDを製造するためのプレマスター盤(PMCD)として「CD-R」が使われてきました。今日ではPCさえあればCD-Rを焼く事ができますが、こと音に繊細かつ敏感なエンジニアやアーティストの間では、CD-Rの円盤自体のメーカーや品番、それを焼くためのドライブ自体にも多くのコダワリがあり「〇〇社のメディアはエラー率は低いが、音が硬い」だとか「〇〇社のドライブは4倍速が一番いい音を記録する」だとか、都市伝説さながらの諸説が囁かれ、皆を一喜一憂、東奔西走させたものでした。


そんな数ある選択肢の中でも多くのエンジニアの信頼と支持を集めていたのは「太陽誘電」製CD-Rと、PLEXTOR製のCD-Rドライブでした。太陽誘電のメディアと、SCSI接続されたPLEXTORのCD-Rドライブが鎮座していることは、まともなスタジオである証の一つでもありました。(それがないスタジオはモグリということです!)


ところが2015年、業界内で根強い信者を獲得していためCD-Rメーカー「太陽誘電」がCD-Rメディアの生産から撤退を発表し、界隈の関係者は騒然となりました。「太陽誘電のCD-Rを買い占めろ!」とばかりに業界関係者が太陽誘電の在庫を買い占めに走り、(業界内は)大変な騒ぎでしたが、それと同時に時代もクラウド化、インターネット経由でのデータ送受が当たり前になり、この数年で一気に「DDPマスター」がCDマスターの選択肢として浸透しました。


DDPというのは「Disc Description Protocol」の略称で米国DCA社(Doug Carson & Associates, Inc.)が光ディスクの製造業界向けの規格として開発した物理的に手に取れる存在である「CD-Rマスター」とは異なり「CDに記録されるデータ」そのものをデータパッケージとしたものです。物理的存在ではなく単なるデータなので、ネット経由で世界中どこのプレス工場へでも数十秒で送れるので大変便利です。


しかしDDPにも弱点があります。品質チェックが困難という点です。


理由は簡単。CD-Rマスターであれば、極端な話、ラジカセに焼き上がったPMCDをポンッと突っ込んで再生すればチェックが可能でしたが、DDPマスターはプレスするまではCD再生機でのチェックができません。CD-Rマスターに慣れた作業者も、この弱点によりDDPマスターでは事故が多くなります。


また厄介なことに、DDPというプロトコル自体がオープンライセンスで、規格運用が厳格ではないために、作成するDAWやマスタリングソフトウェアによって、かなり異なったDDPマスターが出力され、プレス工場での受け入れなどの際に互換性の問題が生じることもあります。


CDプレス工場が技術的に受け入れ可能なDDPマスターデータを作成・入稿するには、CDの規格である通称「レッドブック」の知識と理解、マスタリングエンジニアとして必要な音やデータの扱いの知識、プレス後完成するであろうCDが各家庭のCD再生機でどういう挙動をするかという技術的な予測や広範な経験値が必要です。


DDPマスター作成の主な作業は、CD演奏時間、頭出しや曲間情報の他、レーベルやアーティスト情報、ISRCコード、POSコードなどのメタ情報を適切に記述して、TOCトラックの情報を作成することです。地味な作業なのですが、頭出し時間や演奏時間を記述したPQコードという情報をミスるとCDは正しく再生されません。かなり極端な例ですがPQ信号をもとにCDは信号を読み取るピックアップレンズの位置を決定しているので、ピックアップレンズのサーボモーターを壊してしまう事例などもあります。(PQ信号の裏をかくことで隠しトラックなども作成可能です。)その他にも放送使用やイベント使用などでの著作権管理もDDPの情報で管理されており、DDPでのデータ作成は大変重要です。


その他にもPQシートや、レーベルコピー、エラーレート報告書などの書類、送受信時のエラーに備えたMD5チェックサムの発行など要件を満たしていることも重要です。


DDP入稿でのCDプレスを検討しておられる方は、豊富な経験のあるぜひC3PROJECTにご相談下さい。






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