ミニウェルレディ(miniwell ready SIFIMedTech社)白内障手術について
ただこのレンズは2018年夏現在では健康保険はおろか先進医療特約でもカバーされないので完全自費の治療になり、実施する病院によっても差がありますが概ね片目50万円前後、両目で100万前後がかかります。
手術によって挿入する眼内レンズの選択に白内障患者は苦労すると思います。クリニックの白内障手術説明会の盛況ぶりを見ると自分を含めみな情報が欲しいけど少ないのかもしれないと思い至りました。眼内レンズそれぞれのおおまかなメリットデメリットは眼科サイトなどを見ていただければと思いますが、基本的に一長一短。しかも手術で目に入れてしまうので「単焦点を選んだけど、やっぱり不便だから多焦点にしたい」といっても交換できません。
しかし選択するにあたっての情報としては、眼科のサイトでは原理的な技術解説がないので、白内障で単焦点、多焦点を選択する方の助けになればと思い、自分の体験から、本記事を書き記しました。
(記事について専門家のご指摘あればお教えいただければ幸いです)
水晶体が濁るので白内障になると、網膜上に正常に像を結べなくなります。
濁った水晶体を光が通過する際に光が異常散乱するため眩しさを感じるようになり、最終的には視界が擦りガラスを通したようになり、眩しい照明のあるところや昼間の屋外では視界が真っ白になり何も見えなくなります。夜間はやや見えにくいものの対向車のヘッドライトなどみてしまうと真っ白になって何もわからなくなります。
(白内障がどういう視界か体験したい人はぴんと張ったサランラップにマーガリンを薄く適当に塗り伸ばしたものをフィルターとして世界を見てもらえれば、まさに白内障の視界になります。)
「手術で治るんならさっさと手術すればいいじゃん?」となるのですが、近くを見たり遠くを見たりという焦点を合わせる機能は水晶体が担っているため、これを手術で取ってしまうと目はピントを合わせることができなくなります。つまり手元のスマートフォンを見て(近)遠くの景色をみて(遠)という焦点の移動はできなくなります。手術すると壊れたカメラのようにピンボケになるわけです。
そこで白内障の場合は命に別条がない病気なので、不便になってQOL(Quality Of Life=
生活の質 )が下がって不便になったと思った時に手術する「進行に任せる」病気です。少なくともいまのところは。(進行を遅らせるとするグルタチオンやピレノキシンなどの点眼薬もありますが、自覚症状が出てからの点眼ではあまり効果を認められないのが実情。)
そしてここからが本題。
濁った水晶体を取り除いた代わりに置換される眼内レンズには大きく分けて2種類あります。
・単焦点 どこか1点でのみに合焦。不便だが視界はクリア
・多焦点 手元と遠くの2点固定(3点のものもある)に合焦する。便利だが視界の質は今ひとつ。
単焦点と多焦点それぞれのメリットデメリットは眼科サイトなどを見ていただければと思いますが、基本的に一長一短。しかも手術で目に入れてしまうので「単焦点を選んだけど、やっぱり不便だから多焦点にしたい」といっても交換できません。
多焦点レンズの技術とは
基本的には1枚のレンズをダーツの的のように同心円で分割し、中心から外側へ向かって近方用、遠方用 、近方用 、遠方用 ・・・と交互にレンズの厚みなどを変え2種類の焦点を混在させているわけです。(レンティスのように上下で遠・近を分割しているものもあります)
多焦点レンズでシェアが大きいテクニスシンフォニーなどの回折型レンズは、光を曲げるのに物質の密度差による屈折現象ではなく、電磁波である光の「回り込み」である回折現象を利用したレンズで、レンズに同心円状の溝(回折格子)を微細加工することで光を曲げるレンズです。
実は多焦点レンズのデメリットのひとつであるハロ(光の輪)・グレア(まぶしさ)というのは、回折型レンズで構造上避けられないこの「回折格子」の溝に光があたって乱反射することで起きる二次的な現象です。
原理は違うのですが、形状としては回折型レンズはフレネルレンズのような断面形状です。 表面にレコードのように同心円上の溝がたくさん並んだカード型ルーペを皆さんもご存知かと思いますが、あれがフレネルレンズです。極論、あれをミクロンレベルに加工すると回折型レンズになります。
ようするにカード型ルーペの超高性能型が回折型多焦点レンズなのですが、やはり溝を刻んでいるので、その溝の端で光がギラッと乱反射してしまうのがハロ・グレアという現象です。
▼回折型多焦点レンズの模式図。回折格子の溝で光が回り込む。

ところで、私が選んだミニウェルレディというレンズは、塁審焦点型というタイプで焦点深度拡張型レンズの1つです。これは基本的にはメガネのレンズと同じように、物質密度による屈折現象を利用した屈折型なのですが、レンズ設計において本来嫌がられる「球面収差」(光の焦点が1点に収束しなくなる現象。滲みボケの原因でカメラのレンズでは非常に嫌われる現象。)を上手にコントロールし利用することで、近くから遠くまでの距離に対し焦点域を持たせることができるレンズです。
屈折による収差を利用しているので、回折型には避けられない回折格子による溝がなく、その結果ハロ・グレアが起きにくいのが最大の長所。下図でのD1、D2、D3と示される部位で遠〜近のへの焦点距離を滑らかに変化させながら焦点域を大きく取ることが可能。その上単焦点とほぼ同様のクリアでコントラスト感度の高い視野を得られます。
▼ミニウェルレディ焦点域模式図 収差を利用するため焦点域が大きくとれる

▼各レンズでの焦点域の違い。四角で囲んだ部分が焦点が合って見える範囲

▼ミニウェルとその他レンズの距離ーMTF(距離によるみやすさ)グラフ

ミニウェルレディでの手術後
白内障以前も乱視ありのド近眼だった自分の場合、術後の見え方としては、カタログ的な説明通り手元(0〜30cm)はメガネ必須ですが、40cmより向こうはちょっと乱視の入った視力0.6〜0.8といったかんじで、非常に良い見え方です。この記事も膝に置いたノートPCをメガネなしでパチパチ打っています。いわゆるハロ・グレアも全く感じません。
ただ、暗所で瞳孔が開くとカメラで言う所の「被写界深度が浅くなる」現象のため、ピンボケ気味ですがこれはメガネで補正できるでしょう。逆に眩しいと被写界深度が深くなるため手元20cmのスマホもメガネなしでバッチリ読めます。
また、無着色のミニウェルレディのため非常に世の中が鮮やかに見えます。
健康な人でも水晶体は加齢にしたがい黄色味がかかっているので、いつのまにか自然とブルーライトカットされているわけです。それが一気に無着署になったので世の中が鮮やかなこと鮮やかなこと。
術後、夏の緑茂る木々を見て感じたのは「子供の頃に見た緑眩しい風景」の感動でした。
私が写真とカメラを趣味にしているのでその界隈の用語でいうと、色温度が術前は4800Kだったけど術後は6700Kになりました。いやこれ、ほんとです。(執筆現在左目はまだ手術していません。術後の右と比べて、左の視界はやや黄色味を帯びてます。)
白内障手術を受ける際の幾つかのアドバイス
私は自覚症状が出てから5年以上経っていよいよどう頑張っても見えないというところで手術しました。
どれくらいかというと鏡で見れば黒目の中心部に濁りが目視できるくらいでした。
眼科医では成熟白内障という期になってからの手術ですが、この期での手術を行うのはあまりお勧めできないかもしれません。
術前に眼内レンズの度数を決めるために眼軸測定(角膜から網膜までの距離を測る)が必要ですが、濁りすぎていて光学的に測定できません。代わりに超音波での測定で眼軸測定をしますが精度的には光学測定のほうが正確に測定できます。眼軸測定を光学的に行うためにも早めの手術のほうが良いかもしれません。私の場合は術前の光学測定は不可能でしたので超音波測定で眼軸長を測り、術中に水晶体を破砕吸引後の光学測定で、幾つか用意してもらった度数の中から最適なレンズを挿入してもらえ、非常に良い治療をしてもらえましたが、どこでもそういう用意をしてくれるとは限らないので、早めの手術のほうが良いのかもしれません。
あと、夏の手術は避けたほうがいいかも。
術後1週間は目に汗が入るのはNGですし、入浴、洗顔、洗髪が1週間はできなくなります。
首から下のシャワーは翌日からOKでしたが、洗髪はサロンとかで目に水がかからない状態でやってもらうことになります。
最後に・・・手術は怖いのか?
白内障手術は、目に直接手を加える手術で、目をつむりたくてもまばたきすら出来ません。
ビビりな私なのでどうしても「術中見える」という恐怖のため5年も手術出来ませんでした。
手術の感想ですが、痛みはありません。
ただしめちゃくちゃ眩しいです。なんというか眩しいなんてもんじゃなく眩しさで死ぬかと思うくらい眩しいです。視界が真っ白を飛び越えて青紫になるくらい眩しくて、目が潰れるんじゃないかと思いますが大丈夫です治ります(笑)
要するに眩しいのだけ我慢してれば終わりです。
なにしろ眩しくても強制的に開けられているので目をつむることもできず、そのうえ瞳孔散大(瞳孔開きっぱなしになる)させる目薬をさされているので、眩しさの苦痛がとんでもないのですが、術後数分でその眩しさも眩しすぎて麻痺(慣れ)してきます。数分後には手術終了です。
ドクターを信用して大人しくしていれば治るとと信じるしかありません。
あとはこの記事があなたの治療方針決定の参考になれば幸いです。
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