音で考える録音技師の必要性

2017/07/12
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C3PROJECTはあらゆる音の仕事を手がけるサウンドエンジニアリング専門のチームで、TV、映画、CM、アニメ、吹き替え、ゲーム、ライブPA/SR、レコーディング、音響効果など、あらゆる音の仕事に日々従事しています。

私自身はMAミキサーであり、また、現場で竿を持ってガンマイクも振るプロダクションサウンドミキサー(いわゆる同録の録音技師)でもあるので、同録の際はMAを見越した録音プランを必ず提案してます。

さて、あまり音に詳しくない方は、映像制作に携わっている人ですらなんで撮影時に録音技師が必要なのか、録音技師が何をしているのかをご存知ないようです。

確かにビデオカメラで撮影をすると、音のことなど意識せずともカメラ内蔵のステレオマイクで雰囲気を録音できますし、録音技師の必要性を感じないのは仕方のないことかもしれません。

そこで今回は意外と知られていない「ビデオカメラ内蔵マイクで録音できる音」と、「録音技師が録音する音」の違いをご説明したいと思います。


▼私の最近の録音スタイル。マルチトラック録音によりMAでの自由度も高まった。
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ビデオカメラ内蔵のマイクで録れる音は雰囲気


映画撮影用のシネカメラや監視カメラを除いたほとんどのビデオカメラには、まず間違いなくマイクが内蔵されていますが、結論から言うと内蔵マイクで録音できる音は「その場の雰囲気」程度のものです。

「雰囲気程度の音」というのがどういう意味なのかをもう少し説明すると、例えばガヤガヤと賑わう200人くらいの結婚披露パーティーの中、数人のお友達グループが談笑する風景を、歓談を邪魔しない程度に数メートル離れて撮影したとします。
帰宅後編集しようとしてこの映像を再生しても、おそらくお友達の会話は所々聞き取れる程度で、いくら音量を上げたところではっきりと聞こえることはないでしょう。

つまりこれが「雰囲気しか録音できない」ということです。

これは内蔵マイクである以上「マイクの位置=カメラの位置」であり、「マイクの位置≠音源の位置」という当たり前の制約と、カメラの内蔵マイクが無指向性(あらゆる方向の音を無選別に拾う性質)であるゆえの宿命です。特に「マイクの位置≠音源の位置」という制約は、距離の2乗に反比例して減衰し拡散する物理特性を持つ音にとっては致命的な制約になります。

音の世界では内蔵カメラマイクで録れるような種類のサウンドを「フォーカスされていない音」と表現したります。フォーカスが合っていない音だからといって利用価値がないわけではありません。フォーカスが合っていなくてもその場がどういう雰囲気なのかを伝える重要な情報を持っています。フォーカスされてない音は、その場のざっくりとした雰囲気を伝えることを得意としますが、ある一点の詳細な音を伝えることは苦手なのです。
どんな場所で、どういう天気や環境なのか、何人くらいの人がいるのか、活気の度合い、静寂の度合い・・・など、フォーカスされていない「場」の雰囲気を記録するのがカメラ内蔵マイクの役割なのです。

音の世界ではこういったフォーカスされていない音を「アンビエンス」と言ったりします。アンビエンスとは和訳するとそのまま「雰囲気」です。 要するにカメラの内蔵マイクは雰囲気録音用マイクなのです。


録音技師はフォーカスをコントロールした音を録音する


音は発生した瞬間からあらゆる方向に拡散しつつ減衰していきます。しかもあらゆる物体に当たって反射し、共鳴し、干渉しつつ拡散、減衰していくうえに、同じ空間の他の音とも容易に混ざり合ってしまうので、目的の音を明瞭さを保ったまま録音するというのは意外と難しいのです。

では「録音技師が録音する音」とはどういうものなのか。

先述のカメラ内蔵マイクでは「マイクの位置=カメラの位置」という大きな制約がありましたが、録音技師による録音の場合、カメラから物理的に独立したマイクを駆使して録音するので、より音源にマイクを近づけた「マイクの位置=音源の位置」という好条件で録音できるわけです。

基本的に音はマイクに近いほどフォーカスが強くなり、マイクから遠くなればなるほどフォーカスがボヤけていくので、仮に先述したガヤガヤしたパーティのような条件で会話する数名のグループを撮影するにしても、録音技師がいれば長いブームに取り付けたガンマイクをグループの頭上に伸ばすことで明瞭な会話を録音することができるわけです。
場合によっては話者の胸元などのごく至近にピンマイクを取り付けることで、さらに明瞭度の高いフォーカスされた音を録音することも可能です。


▼ブームで差し伸ばしたガンマイクが明瞭な会話と場の雰囲気をきちんと捉える。

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しかしフォーカスの高い音ばかりでは、その場の雰囲気が伝わらないことがままあります。そういう時は、あえてファーカスの合っていないマイクからの「雰囲気=アンビエンス」を混ぜ込むことでその場の状況が伝わるようにバランスをとります。

例えばコンサートの映像でバンドの演奏音とボーカルだけを録音しても、コンサート会場のスケール感や高揚感、ライブ感は伝わりません。演奏音とボーカルだけの録音はフォーカスはバッチリあっているにもかかわらず、周囲の雰囲気がわかる音が含まれていないので全く盛り上がっている感じがしないのです。そこで録音技師は客席に何を録音するでもなく無造作に立てた数本のマイクの音をバランスよく混ぜこむことで、コンサート会場のあの盛り上がりを再現し、録音するのです。これが音屋がよくいうところの 「空気感を掴む」というやつです。


フォーカスがバッチリ合っているだけでも、アンビエンスだけでもダメ。


そういうなんとも難しい塩梅を録音技師の経験で加減し、マイクの位置や向き、マイクの種類、ミックスバランスで整えて録音するからこそ、高精細な映像と共に伝わる音をみなさんにお届けできるのです。


この記事で録音技師に録音を任せる重要性を少しでもご理解いただけたら幸いです。


C3PROJECTは撮影時の音声同録、MA、音響効果のほかVRに特化した録音や音響でも多くの経験とノウハウを持つあらゆるサウンドの専門技術チームです。
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