Protools HDX で Focusrite Liquid Mix 32を使う
2015/12/31
C3PROJECTでは2015年もいろんなお仕事をさせていただきました。
テレビ東京「永遠の0」の音響効果から年が始まり、吹き替え、CM・ドラマの同録などの外現場、番組MA、海外ゲーム音声ローカライズ、音楽制作まで幅広くお仕事させてもらえたのも皆様のおかげです。
また赤坂にDiME Studioとして小さいながらもスタジオを音響効果アウルサウンドワークス(株)と共同運営させていただき皆様にご愛顧いただいております。
2016年も皆様の音を最高のものへと仕上げることのできる技術をご提供し、お役に立てますよう精進してまいりますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。
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さて本題。私がProtools M-Poweredなんていうクソ懐かしい物を使っていた頃から手放せない音作りのプラグインがありまして、Focusrite Liquid Mix というEQ+Dyn系のプラグインなのですが、未だにこれを超える製品を見つけらません。
Liquid Mixには2つのラインナップが有ります。
・LiquidMix HD … Protools HD(TDM)専用
・LiquidMix 16/32 … 外部DSPユニット兼コントローラをFireWire400で繋ぐ(RTAS/VST/AU対応)
ところがLiquidMixはその後のサポート終了でAAX版プラグインがリリースされることもなく、HDXでは使用できなくなりました。
▼LiquidMixとは・・・
LiquidMixのEQは多彩なハードモデリングを搭載していて、手軽に素晴らしいミラクルを提供してくれるので音楽ミックスには欠かせないアイテムで、古いプラグインですが、未だに私のような熱狂的なファンが世界中にいる珍しいプラグインです。
音の世界でもインパルスレスポンスによるモデリング技術はよく目にしますが、多くは静的なインパルスレスポンス(IR)の重畳であり、音のように常に激しく動的変化する際の瞬時のインピーダンスなどの挙動をモデリングしきれていません。そうした静的インパルスレスポンスに対して、LiquidMixは「動的インパルスレスポンス」をDSPで高速演算してサウンドに反映するダイナミックコンボリューションという技術によるプラグインです。この技術自体はLiquidMixを販売したFocusrite社の技術ではなく、SintefexAudio社による技術供与でした。
Fosusriteはこのダイナミックコンボリューションによるモデリングサウンドを製品のメインストリームにしたかったようで、LiquidMixの兄弟分にLiquidChannelなどがいますが、どうやらこれら製品の開発販売後、FocusriteはSintefexと袂を分かったようで、その後の後継機やサポートも終了してしまいました。(ちなみにその後、ダイナミックコンボリューション技術はUniversalAudio UADなどで実装され名実ともにメインストリームとなり引き継がれています。)
▼使えなくなったLiquidMixを使いたい
先日自宅のHD3AccelもようやくProtoolsHDXに移行しましたが、この移行がずーっと実現できなかったのもLiquidMixを手放すことができなかったというのが1番大きな理由です。
HDX環境というかProtools11以降、AAX64bit環境でLiquidMixを使いたい方がどれほどおられるかは最早謎ですが、周囲にも数名のLiquidMix信者仲間がおりますので、他にもいらっしゃるんではないかと思い、当方で成功したAAX64bit環境でのLiquidMix使用方法をナレッジベースとして置いておきます。
以下LiquidMix = LMとします
★ 環境と準備するもの
【ハードウェア環境】
Mac mini(Late 2014) Core i7 3GHz/Mem16GB/HDD1TB
Sonnet xMac mini Server(HDXカード用のTB - PCIeシャーシです)
AKITIO Thunderbolt Dock(TB - FW800などの変換ドックでここにLMを繋ぐ)
Focusrite LiquidMix 32(安定度の問題でAU版プラグインを変換して使用します)
【ソフトウェア環境】
OSX 10.11.2 (El Capitan)
ProtoolsHD v12.4
Bluecat Patchwork v1.71(AAX64でVSTやAUを動かすコンテナプラグイン)
SoundRadix 32Lives v1.06(LMは32bitプラグインなのでこれで64bit変換します)
★導入手順
まずLMのドライバインストールですが、YosemiteやElCapitanなどではインストーラーがそもそもインストールしてくれません。Gatekeeperなどの問題ではなくLM開発当時とはOSバージョンが上がりすぎていてインストールポイントを見失ってるようですので、インストールパケージをバラしてインストールします。(Marvericksくらいだと普通にインストールできるかもなのでそういう方はそれで大丈夫だと思います。)
1.Focusrite公式から最終バージョンのドライバであるv3.01のディスクイメージを用意します。
2.展開したインストールパッケージ(Install LiquidMix.mpkg)を右クリックし「パッケージの内容を表示」させる

3.表示されたContents>Packaes 内のLiquidMixAU.pkgをインストールします。

4.エミュレーションファイルも手動インストールになります。
先ほどと同様、公式よりエミュレーションファイルの各サンプルレート毎(44.1K、48K、96Kなど)ディスクイメージをDLし、展開するとインストールパッケージが出てきます。 ・・・が、これもインストール失敗するので、インストールパッケージを 右クリック>パッケージの内容を表示 させます。
表示された中身の Contents>Resources 内にさらにインストールパッケージがあるので 右クリック>パッケージの内容を表示 させます。
すると下のスクリーンショットのように Contents>Archive.pax.gzファイル がありますのでダブルクリックし展開します。

するとエミュレーションファイルは下のスクリーンショットのようにダウンロードフォルダ(Macintosh HD//Users/(hoge)/Downloads)に展開されるので、LiquidMixフォルダ内の.leqや.lcpなどの全ファイルをMacintosh HD/Library/Application Support/LiquidMixフォルダへコピーします。(各サンプルレート毎のエミュレーションファイルについて同様のインストール操作をします)

5.LiquidMixのAUプラグインを32Livesで64bit変換しておく。
LMのプラグインはVSTもAUも32bitプラグインなので、64bit化しないとBluecat Patchworkでも動かせません。
そのために32Livesで64bitに変換しておきます。
このあたりはやればわかると思うので自力でどうぞ。
6.El CapitanのAppNap機能を殺す
何故かプラグイン起動後数十秒で操作が不能になってしまうのでアクティビティモニタで監視して原因を探ってみると、数十秒でプロセスがアイドルしてしまっていた。明らかにOSXがプロセスを寝かしつけて取り上げちゃってるんですが10時間ぐらい原因がわかりませんでした。
原因はMountain Lionぐらいだかでこっそり実装されていたバックグラウンドのプロセススケジュールを取り上げて仮死状態にすることで消費電力削減や表プロセスのCPU割当を増やすという余計なことする「AppNap」でした。こいつのせいでLM DSP − LiquidMixManager − プラグイン間の通信が途絶し操作ができなくなる不具合が起きて相当悩んだという曲者。殺します。
アプリケーションフォルダ内のLiqudMix.appを 右クリック>情報を見る で、一般情報タブ内の「AppNapを切にする」にチェックを入れます。
Mountain Lionぐらいだかでこっそり実装されていたバックグラウンドのプロセススケジュールを取り上げて仮死状態にすることで消費電力や表プロセスのCPU割当を増やす余計なことする奴が「AppNap」です。
7.LiquidMixManagerのHardware follows pluginsのチェックはOFF
チェックが入っていると若干レスポンスが落ちる(?)模様。
気になる人は外してください。
8.Bluecat Patchwork で 64bit化したAU版LMをエンジョイする!
あとはBluecat Patchworkをインストールし、Protools上でPatchworkを起動。
Patchwork内で先ほど64bit化したAU版LMを起動すればOK。
Enjoy LiquidMix!!!
ということでお読み下さり実際作業された方がいらっしゃいましたら大変お疲れ様でした。
AAX64bit環境でのLM運用について多大な助言を頂いたうえだ様にも感謝致します。
最後ですがもしあなたがLiquidMix信者という方でしたらぜひコメントくださいませ!
テレビ東京「永遠の0」の音響効果から年が始まり、吹き替え、CM・ドラマの同録などの外現場、番組MA、海外ゲーム音声ローカライズ、音楽制作まで幅広くお仕事させてもらえたのも皆様のおかげです。
また赤坂にDiME Studioとして小さいながらもスタジオを音響効果アウルサウンドワークス(株)と共同運営させていただき皆様にご愛顧いただいております。
2016年も皆様の音を最高のものへと仕上げることのできる技術をご提供し、お役に立てますよう精進してまいりますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。
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さて本題。私がProtools M-Poweredなんていうクソ懐かしい物を使っていた頃から手放せない音作りのプラグインがありまして、Focusrite Liquid Mix というEQ+Dyn系のプラグインなのですが、未だにこれを超える製品を見つけらません。
Liquid Mixには2つのラインナップが有ります。
・LiquidMix HD … Protools HD(TDM)専用
・LiquidMix 16/32 … 外部DSPユニット兼コントローラをFireWire400で繋ぐ(RTAS/VST/AU対応)
ところがLiquidMixはその後のサポート終了でAAX版プラグインがリリースされることもなく、HDXでは使用できなくなりました。
▼LiquidMixとは・・・
LiquidMixのEQは多彩なハードモデリングを搭載していて、手軽に素晴らしいミラクルを提供してくれるので音楽ミックスには欠かせないアイテムで、古いプラグインですが、未だに私のような熱狂的なファンが世界中にいる珍しいプラグインです。
音の世界でもインパルスレスポンスによるモデリング技術はよく目にしますが、多くは静的なインパルスレスポンス(IR)の重畳であり、音のように常に激しく動的変化する際の瞬時のインピーダンスなどの挙動をモデリングしきれていません。そうした静的インパルスレスポンスに対して、LiquidMixは「動的インパルスレスポンス」をDSPで高速演算してサウンドに反映するダイナミックコンボリューションという技術によるプラグインです。この技術自体はLiquidMixを販売したFocusrite社の技術ではなく、SintefexAudio社による技術供与でした。
Fosusriteはこのダイナミックコンボリューションによるモデリングサウンドを製品のメインストリームにしたかったようで、LiquidMixの兄弟分にLiquidChannelなどがいますが、どうやらこれら製品の開発販売後、FocusriteはSintefexと袂を分かったようで、その後の後継機やサポートも終了してしまいました。(ちなみにその後、ダイナミックコンボリューション技術はUniversalAudio UADなどで実装され名実ともにメインストリームとなり引き継がれています。)
▼使えなくなったLiquidMixを使いたい
先日自宅のHD3AccelもようやくProtoolsHDXに移行しましたが、この移行がずーっと実現できなかったのもLiquidMixを手放すことができなかったというのが1番大きな理由です。
HDX環境というかProtools11以降、AAX64bit環境でLiquidMixを使いたい方がどれほどおられるかは最早謎ですが、周囲にも数名のLiquidMix信者仲間がおりますので、他にもいらっしゃるんではないかと思い、当方で成功したAAX64bit環境でのLiquidMix使用方法をナレッジベースとして置いておきます。
以下LiquidMix = LMとします
★ 環境と準備するもの
【ハードウェア環境】
Mac mini(Late 2014) Core i7 3GHz/Mem16GB/HDD1TB
Sonnet xMac mini Server(HDXカード用のTB - PCIeシャーシです)
AKITIO Thunderbolt Dock(TB - FW800などの変換ドックでここにLMを繋ぐ)
Focusrite LiquidMix 32(安定度の問題でAU版プラグインを変換して使用します)
【ソフトウェア環境】
OSX 10.11.2 (El Capitan)
ProtoolsHD v12.4
Bluecat Patchwork v1.71(AAX64でVSTやAUを動かすコンテナプラグイン)
SoundRadix 32Lives v1.06(LMは32bitプラグインなのでこれで64bit変換します)
★導入手順
まずLMのドライバインストールですが、YosemiteやElCapitanなどではインストーラーがそもそもインストールしてくれません。Gatekeeperなどの問題ではなくLM開発当時とはOSバージョンが上がりすぎていてインストールポイントを見失ってるようですので、インストールパケージをバラしてインストールします。(Marvericksくらいだと普通にインストールできるかもなのでそういう方はそれで大丈夫だと思います。)
1.Focusrite公式から最終バージョンのドライバであるv3.01のディスクイメージを用意します。
2.展開したインストールパッケージ(Install LiquidMix.mpkg)を右クリックし「パッケージの内容を表示」させる
3.表示されたContents>Packaes 内のLiquidMixAU.pkgをインストールします。
4.エミュレーションファイルも手動インストールになります。
先ほどと同様、公式よりエミュレーションファイルの各サンプルレート毎(44.1K、48K、96Kなど)ディスクイメージをDLし、展開するとインストールパッケージが出てきます。 ・・・が、これもインストール失敗するので、インストールパッケージを 右クリック>パッケージの内容を表示 させます。
表示された中身の Contents>Resources 内にさらにインストールパッケージがあるので 右クリック>パッケージの内容を表示 させます。
すると下のスクリーンショットのように Contents>Archive.pax.gzファイル がありますのでダブルクリックし展開します。
するとエミュレーションファイルは下のスクリーンショットのようにダウンロードフォルダ(Macintosh HD//Users/(hoge)/Downloads)に展開されるので、LiquidMixフォルダ内の.leqや.lcpなどの全ファイルをMacintosh HD/Library/Application Support/LiquidMixフォルダへコピーします。(各サンプルレート毎のエミュレーションファイルについて同様のインストール操作をします)
5.LiquidMixのAUプラグインを32Livesで64bit変換しておく。
LMのプラグインはVSTもAUも32bitプラグインなので、64bit化しないとBluecat Patchworkでも動かせません。
そのために32Livesで64bitに変換しておきます。
このあたりはやればわかると思うので自力でどうぞ。
6.El CapitanのAppNap機能を殺す
何故かプラグイン起動後数十秒で操作が不能になってしまうのでアクティビティモニタで監視して原因を探ってみると、数十秒でプロセスがアイドルしてしまっていた。明らかにOSXがプロセスを寝かしつけて取り上げちゃってるんですが10時間ぐらい原因がわかりませんでした。
原因はMountain Lionぐらいだかでこっそり実装されていたバックグラウンドのプロセススケジュールを取り上げて仮死状態にすることで消費電力削減や表プロセスのCPU割当を増やすという余計なことする「AppNap」でした。こいつのせいでLM DSP − LiquidMixManager − プラグイン間の通信が途絶し操作ができなくなる不具合が起きて相当悩んだという曲者。殺します。
アプリケーションフォルダ内のLiqudMix.appを 右クリック>情報を見る で、一般情報タブ内の「AppNapを切にする」にチェックを入れます。

Mountain Lionぐらいだかでこっそり実装されていたバックグラウンドのプロセススケジュールを取り上げて仮死状態にすることで消費電力や表プロセスのCPU割当を増やす余計なことする奴が「AppNap」です。
7.LiquidMixManagerのHardware follows pluginsのチェックはOFF
チェックが入っていると若干レスポンスが落ちる(?)模様。
気になる人は外してください。

8.Bluecat Patchwork で 64bit化したAU版LMをエンジョイする!
あとはBluecat Patchworkをインストールし、Protools上でPatchworkを起動。
Patchwork内で先ほど64bit化したAU版LMを起動すればOK。
Enjoy LiquidMix!!!

ということでお読み下さり実際作業された方がいらっしゃいましたら大変お疲れ様でした。
AAX64bit環境でのLM運用について多大な助言を頂いたうえだ様にも感謝致します。
最後ですがもしあなたがLiquidMix信者という方でしたらぜひコメントくださいませ!