とある音屋の日常 「C3PROJECTスタッフBlog」

アナログフィルター。デジタルフィルター。

2010/07/05
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アナログ vs デジタル 

この意見を音の業界人同士で戦わせるほど危険且つ不毛なことは他にないと思う昨今、アナログでもデジタルでも、今手元にある環境で最高の音をお届け出来るのが「良いエンジニア」の条件だと思う私です。

さて、デジタル機材もアナログ機材も所詮道具にすぎないので、適材を適所に配置していけばよいというスタンスの私ですが、最近コレだけは何が何でもアナログにしとかないとだめだなと思ったのが「 HPF 」でした。


HPFは皆さんご存知の通り、「 HPF 」です。
それ以上でもそれ以下でもないです。

HPF=ハイパスフィルター。その名の通り高域のみ通過させるフィルターなのでローカットフィルターとも言います。個人的には機能と呼び名が直感的に一致する「 LCF 」(ローカットフィルター)と言ったほうがピンと来ますが、世間様ではHPFというのがシャレオツなようです。ともかく音響技術者的にはHPFといえば、不要な80Hz以下の帯域をバッサリカットして音をシャッキリポンとさせるスイッチです。

HPFだけはアナログで入れないとロクなことにならない理由というのは・・・。

私はよくマイクプリにFocusriteのISA 428をよく使っていて、ISA 428には連続可変のHPFが付いているので、いつもHPFのトリムを12時くらいにして声を録っています。やはり声というのは多くの場合HPF入れないと、どうしても低域がフワフワとだらしなく輪郭をぼやけさせて落ち着かない音になるので、しっかりとHPFを入れて声の輪郭を
整えます。


・・・が、たまたまアウェイなスタジオに手持ちのマイクプリを持たずに収録に挑んだ時の事。


マイクはNeumann U87i、マイクプリはYAMAHA O2R96の卓プリ。ブースの吸音が悪く、やたら低域のモードが激しい。
低域がモワつくこと自体はよくあることなので、02RのEQでHPFをONして切ってあげたのですが・・・・


        「  音 が ガ サ つ く ! ! 」


HPFでローカットするとモワつきは無くなったのですが、音を聴くとHPFでカットされた低域が有ったであろう部分に明らかにガサついた低域の痕跡が300~800Hzあたりにまんべんなく濃く残る。。。 このガサつきをどうにかしようとさらにHPFやEQをかけると音はフィルターくさい音に。どうにもこうにも。

そこで、ふと思い付いてマイク側のローカットを入れたところ、スッキリと問題は解決しました。

要するに、低域成分による高域成分の変調はアナログ領域での複雑な相互作用の結果なので、AD変換後のデジタルHPFではどうにもごまかせず、信号的に不要に盛り上がった低域のせいで混変調してしまった高域成分の嫌味な部分はHPFの名の通りスルーして残ってしまうようです。

ブースの空間定在波や回路での混変調のようなアナログ領域での複雑な相互作用は、生き物のように予測が難しい部分で、単に帯域を切り落とすだけのデジタルフィルターでは、そんな混変調を起こした状態の音を処理しきれないわけです。


ということで妙な変調を起こす前にアナログ段でHPFを掛けておかないとおかしくなるという事。


Comp/Limあたりはデジタル卓内部のものでもいいのだけど、特にHA、LPF、EQの部分、ここだけは絶対に予算を渋っては駄目なところですね。

C3PROJECTでは案件の必要に応じて、音の入り口であるアナログ機器段でのサウンドクオリティ、S/N比などを考え、Forcusrite、GRACE DESIGNなどの最高級クラスAディスクリートプリアンプを使用いたします。
ごまかしの利かない録音にぜひご活用いただければと思います。




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