とある音屋の日常 「C3PROJECTスタッフBlog」

サウンドエンジニア、サウンドデザイナーとしてレコーディングからPAまで音の仕事ならなんでもおまかせC3PROJECTの日常。

SENNHEISER MKH416 vs MKH8060 

知っての通りSENNHEISER MKH416は、現場で遭遇するあらゆるハードな環境に耐えうる性能と実績がある。

・狙った音を明瞭に収録する指向性と、音質の両立
・とにかく頑丈。壊れない。不調知らず。

この2点を実にシンプルに実現しているがゆえの「416信仰」。
特に頑丈さにおいては感心するばかり。自身の実体験でも、落としても、ぶつけても、-40度の冷凍庫の中で冷やされてからの夏の炎天下への移動でも、突然の雨に濡れてファンタム電源がショートしても、まぁとにかく壊れない。それでいてしっかりと明瞭な音を収録する驚異のコンデンサマイクである。

しかし最近のハリウッド界隈でのフィルムプロダクションでガンマイクといえばSchoeps MK41+CMC6というのが定番になってきている。一方、日本でMK41を使っている人がほとんど居ないのは根強い「416信仰」のせいで、他を模索することすら放棄している気配すらある。

▼ガンマイクの王様 SENNHEISER MKH416
IMG_1245.jpg

日本ではプロダクションサウンド(いわゆる同録) における機材更新は緩慢で、20、30年前で止まっている会社も多い。映像屋さんの機材更新は活発であるが、ことサウンドに関してはフリーランスですらあまり活発でないように思う。

さて、C3PROJECTでも映像制作におけるプロダクションサウンドを担当するときは、同録のセリフ収録にSENNHEISER MKH416を使うわけですが、先述のようにハリウッドのフィルムプロダクション現場ではメイキング映像などを見るに、かなりの割合でSCHOEPS MK41が使われているようです。

ハリウッドでMK41が選ばれる理由は、MKH416と遜色ない性能でありながら、MKH416が全長250mm 重量175gに対し、MK41は全長116mmと短く、重量70g弱と半分以下の軽量であったことが大きいと思う。全長、重量ともに半分以下なのである。さらに言えば、多分それ以上に、マイクのスリットが416系は全長の大半を占めているが、MK41のスリットは先端部だけなので、先端部のみ覆うようなボール型風防で良い。416では大きく重いカゴ型風防が必要だが、これは大変重く、負担が大きい。SCHOEPS MK41は風対策が非常に楽なのである。

MK41のような軽量小型化の恩恵は、3メートルを超える長いブーム(マイク竿)を扱うブームオペレータにとっては大きなメリットになる。3メートルを超えるブームになると、テコの原理でケーブルの重さすらばかにならない負担になる。(C3PROJECTではケーブルにCANARE L4E6Sを使っていましたが、先日から軽量化のためにL4E5Cを使っています。)


ちなみにSCHOEPS MK41のお値段、日本円で30万円弱。

ちょっとおいそれと機材更新できる値段ではありません。

だからというわけではありませんが、今回はSENNHEISERみずからが「416の後継である」とアナウンスするMKH8060を試してみました。

今回は東京は半蔵門のSystem5様を通じて8060のデモ機をお借りいたしました。

▼届いたMKH8060の一式。 サスペンションなどはない。
IMG_1329.jpg

▼416と8060の比較ではこのようにセッティングしてブームに取り付けた。
IMG_1343_.jpg


ちなみにお借りした8060は、この5月から毎週土曜深夜0時ごろから放送の 朝日放送「Times」(公式サイト)(全8回放送)の収録にて使用させていただきました。このドラマ「Times」の音は、当方C3PROJECTが収録、音響効果、MAまで担当させていただきました。OA後半年間は見逃し配信としてYouTubeでも配信が決まっておりますので、ぜひご覧ください。

今回の収録では416と8060を上記セッティングにて、HA/RecorderにZOOM F8 、ワイヤレスにSENNHEISER EW112P x3波を活用しました。


以下、実際に現場で使った感想、416との比較のレビューです。

・軸上の音源(声)に対して416と8060で音の印象に大きな差は無い。

・軸上の声の収録という条件では416、8060の音質に大きな差は感じられないが、よく聞くと8060の方が500Hzぐらいから下が豊かに聞こえる。

・416では荒っぽく雑になる中低域が、より豊かで密度が高くツヤのある感じ。

・416より軽いので長竿につけた時の負担が軽い

・416より短いので天井低い場所でも扱いやすい

・416よりも10dBほど感度が高く、静かなアンビ収録もHA残留ノイズを気にせずにゲインを上げられクリアにとれる。

・軸線から外れても416のように急激に芯を失って音がうすくなる感じでは無く、単純に音圧が下がるだけのように聞こえる。

・付属のスポンジ風防は密度高すぎ。明らかに音ヌケが悪くなるのでRycoteなどの開放気泡フォームが必須。



上記が大きく感じたことですが、注目したいのは指向性について。

軸外でもカラーリングなく減衰していくという公称通りだが、その特性の良さゆえに困ったことが起きまして・・・。ドラマの録音でブームを3メートルちかく伸ばして自分が役者から離れてしまうとマイクの微妙な角度を目視確認するのが困難で、マイクが音の中心を狙っているかを目では確認しづらい。416であれば軸外にあると音が痩せて薄くなるが、8060だと軸外になっていても音質は変化せず音量だけが変わってしまい、結果的にうまく拾えていない事があった。目で確認しにくい距離だと軸上軸外の判断がつきにくいデメリットはかなりの痛手に思う。

軸外特性の良さゆえ扱いづらいというのが、ドラマの現場で使って一番感じたことですが、ライブのアンビ収録などではいい結果となるかもしれませんし、長さ軽さなどは、とても好印象で買い替えに値するマイクです。逆説的で皮肉な結果ですが、失敗できないドラマの録音などには、上記のような音響特性の良さが致命的に思いました。

今のところ、長さ重さのメリットと、軸上軸外の判断がつきにくいというデメリットが拮抗していて、購入の決断ができません。8060と同じ長さ重さで、軸外の音については416と同様に音質をあえて気にしない仕様で新製品を出してくれたらいいなと思います。SENNHEISERジャパン様、本国へのフィードバックよろしくお願いいたします!




category: 音響機材関連

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