とある音屋の日常 「C3PROJECTスタッフBlog」

サウンドエンジニア、サウンドデザイナーとしてレコーディングからPAまで音の仕事ならなんでもおまかせC3PROJECTの日常。

Euphonix MC MIX(AVID Artist Mix)レビュー 

従来使っていたHUIコントローラーのProjectMixI/Oに代わって、Euphpnix(現AVID傘下) MC Mix(現在はAVID ArtistMixとして販売中)を今年の1月から導入しています。

ArtistMixシルバーモデル。現行の黒モデルとは色違いなだけで性能はなにも変わらない。
mcmixproduct.jpg

色々と忙しく久しぶりのブログ更新ですが、今回はこのEuphonix MC Mixについての使用感などを。


■EuphonixというメーカーとEuconプロトコルの背景

ところで、Euphonixと言えば空気感まで再現するミックスエンジンという評価でSYSTEM5という大型コンソールで業界を席巻する会社。SYSTEM5は宇宙船のように各ボタンが光り、カッコ良く、性能も操作性も非常に高い卓ですが、いかんせん不安定。基本的にEuphonixのコンソールは歴代のどのコンソールも使えば使うほどバグが苛立たしいという特徴的な「 仕様 」を持っています。それさえなければ結構使い易く高機能な卓なのですが・・・。あとICONなどと比べると、若干操作系が難解です。

機能の改善やバグの改善をサポートに泣きつこうが、InterBEEでチクリとやろうが「Oh!Sorry!!次のバージョンアップデートでフィックスするよ!HAHAHAHA!」といって一向に改善しません。得意の逃げ口上は「電源ですかね~・・・・」「W/Cの相性ですかね~・・・・」

さておきEuphonix社は、SSL社の技術者が分派して起こした大型コンソール専門の会社だったわけですが、DAWの浸透とともにパーソナルユースのDAWコントローラ市場にも参入してMCやArtistシリーズを投入して来ました。

ラージコンソールのSYSTEM5を含め、MC Artistシリーズまで、その製品群の中核を担う技術が「Euconプロトコル」

従来の各社DAWではフェーダーやエンコーダなどのフィジカルコントローラとの制御通信を、Mackie社が開発したHUIプロトコルで担っていました。HUIプロトコルは1997年に開発されたMackie HUIというコントローラー用の制御規格。MIDI規格の物理通信層で接続されるため制御信号の通信速度も情報量もかなり限定的なもので、フェーダーでのコントロールにラグがあったり、フェーダー解像度が8bitで少々精度に問題があったり、メタデータとして織り込むことの出来る情報量にも限界があり、Desidesign社がProtools専用のICONなどの大型コントローラを発表した後では、HUIプロトコルの貧弱さが目立つばかりでした。

そんな状況の中、Euphonix社が2008年に発表したフィジカルコントローラがMC Artistシリーズ。
Euphonix社の働きかけで各DAWメーカーがEuconプロトコルの対応をネイティブで実現させることで、HUIプロトコルの独壇場だったフィジカルコントローラー市場に新しい選択肢ができたわけです。

Euconプロトコルの利点は、通信にEthernet(LAN)を使った高速通信が可能なこと。 HUIではMIDI規格内での通信だったため通信速度、制御信号の情報量などの限界があったところを、Ethernetの高速通信を活かしてブチ破りました。
2008年の発表当初はEuphonixはまだAVID傘下ではなく、むしろ同社SYSTEM5と、Protools専用大型コントローラのICONという大型コンソール市場でのライバル関係でした。
そのせいか、Artistシリーズ発表当初はNuendo/Cubase、LogicなどはEuconに対応して最大限の恩恵を享受できましたが、Protools環境ではEuconプロトコル非対応のため、HUIモードでの限定対応でした。

その後、EuphonixはAVID傘下となり、Protools9からはEuconにネイティブ対応するようになり、おかげでプラグインのコントロールや、フェーダーコントロールの精度などの操作性が格段に向上し、使いやすくなったのは言うまでもありません。

Artistシリーズの発表当初はMC Mix、MC Controlともに色がシルバーでしたが、現行機種は黒になって、名称もArtist Mix、Artist Controlと改称されています。

黒とシルバーの別製品みたいに見えますが、全く機能、性能は同一で単にカラーリングと名称の違いだけです。(シルバーモデルもファームウェアアップデートで黒モデルと全く同性能同機能になります。・・・が、MC Controlだけはリビジョンが有り、MC Control V1とMC Control V2の違いがあります。V1はジョグシャトルがシルバーでV2は同部が黒く、V2はタッチパネルスクリーンの解像度や品質、制御用マイコンの向上による反応速度改善、ロータリーエンコーダーのパーツが改善されていて全く別物ですので、中古購入の際はV2であることを確認したほうが良いでしょう)


■実際の使用感について

結論から言いますと「他に選択肢もないし仕方なくつかっている。バグさえなければ文句ないけど、バグや安定性から評価は70点。」という感じ。

そもそもフィジカルコントローラーという市場は選択肢自体が少ない上、コスト的な面でも手頃な価格で実用に耐えるコントローラーが存在しないのが現状です。

Aritist Mixは実勢価格1台あたり12万円前後。お世辞にも手が出やすい価格とはいえません。・・・が、これより安い価格帯にろくな製品がない上、Aritist Mix以上の使用感を求めると、価格帯がSSL Matrix、SSL Nucleus、そしてICON D-Commandなどのラインになってしまうため数百万円帯になってしまうため、事実上、パーソナルユースでまともに使えるコントローラは好き嫌いに関わらずAritist Mixしかないというのが答えです。

そして使用感について。

うちではシルバーのAritist Mixを2枚導入して、従来使っていたProjectMixI/Oのフェーダーと合わせて24フェーダーのシステムになりました。

ProjectMixI/Oを使っていた時は、机の上をProjectMixI/Oが占拠して威圧感もあって大変でしたが、Aritist Mixの導入で16フェーダーが目の前にありつつも、威圧感もなくスッキリスマートな環境になりました。 個人環境ではこれはとっても重要な要素だと思います。でっかいコントローラーに机を選挙されるとなにもできなくなってしまいますから・・・。
(ProjectMixI/Oにはサイドデスクに移動してもらい、主にAUXセンドをフェーダーフリップさせて使っています。)

▼実際の写真。コンパクトだけどフェーダピッチも広い16フェーダー環境はすごくいい。
A112.jpg

素晴らしいのはICONのカスタムフェーダーと同じような機能があること。
自分が使いやすい特定のフェーダーに、好きなトラックを常にロックして表示させておくことが可能です。ある意味ではICONのカスタムフェーダーでは展開できる場所が限定されるけど、Artist Mixでは本当に好きなフェーダーをロックできるので、ICONより使いやすいかも。ボーカルや台詞など常に手元においておきたいフェーダを一度ロックしておけばフェーダーをバンクさせようがナッジしようが常にそこにあるというのは非常に便利です。

またプラグインのコントロールも簡単で、ロータリーエンコーダーでのコントロールだけでなく、フェーダーにパラメータをフリップしてのコントロールも簡単です。例えばエンコーダーではやりにくいと思えば、EQ、コンプ、リバーブなどあらゆるプラグインのパラメーターをフェーダー上に展開して精密にコントロールすることもできるので、より感覚的に耳と感性でミックスできることは素晴らしいと思います。

▼高解像度な有機ELディスプレイは情報量も多く便利。鍵マークはフェーダーロックしていることを示す。
A111.jpg

その他感じたメリット
・フェーダーコントロールの精度は素晴らしい。非常に精度よくミックスでき、レベルジャンプもなく安心できる。
・高解像度有機ELディスプレイにTr名、Ch番号、各種ステータス、メーターなど多くの情報が表示できる。
・ELディスプレイには漢字の表示も可能で、トラックが多くなっても視認判別性が良い。
・PCキーボードを一回り大きくした程度の薄型軽量な本体のおかげで、個人宅でもコンパクトに環境が整えられる。
・LANケーブルで接続するだけというのはほんとうに楽。



しかしながらメリットばかりではない。

Euphonixユーザーになるのは悪魔の契約と一緒で、恩恵と引き換えに主にバグ的な仕様で悩まされることになる。

・突然フェーダー制御が不能になる。(コントローラー→PCの通信は生きてるがPC→コントローラが息してない)
・突然、LEDステータスやELディスプレイの各表示がバグりだしてステータスを正確に反映しなくなる。
・Artist Mix2台ごときでEthernetにすごい負荷がかかってその他の通信が不安定になる。
・Windowsで使う場合なぜか日本語環境だとAudioトラックのフェーダーがアサインされないクソ仕様。
・とにかく不安定で業務レベルの長時間使用ではしょっちゅう制御をロストするのでげきおこプンプン丸。


個人的に特に困ったのは、Ethernetへの高い負荷。

通常のインターネット通信も通っているスイッチングハブにArtist Mixを2台をつなぐと、Artist Mixの制御トラフィックが馬鹿みたいに多いので、ハブで通常のインターネット通信がパケ詰まりしてしまうという重大な不都合が。(使ってたスイッチングハブがクソな可能性も捨てきれないがBAFFALOの100Mbpsスイッチングハブだしそんなに性能悪いとも思えない。)

原理的にはNICを2枚用意してインターネット通信用と、Artist Mix用で分離すればいいのですが、そもそもWIndowsというOSはNICを2つを使う環境をを想定していないのでNICを2つ用意してもクッソめんどくさいことになります。(WIndows環境では特定アプリの通信を特定のNICに流すことが出来ず、安定した運用をインターネット通信と両立しようとすると、手動でルーティングテーブルを指定する必要があります。)


ちなみにうちの場合ですがインターネット通信をUSBにつないだWiFiアダプタで行い、マザーボード上の有線LANをArtist Mixとの通信専用にしました。

・・・がWindowsが半強制的にOS側で有線LAN を優先NICに指定するため、有線LAN の先がWAN側に繋がっていなくても、有線LAN にインターネット接続を求めにいってしまい、通常のインターネット通信が接続エラーになってしまいます。(有線LANはメトリック=20、無線LANはメトリック=25を勝手に指定されてしまうので、有線と無線がある場合、有線がWANに繋がっていなくても無線に通信が流れてくれないのです。)

そのため宅内のLANをサブネットマスクで2つに分割しインターネット用のサブネットとArtist Mix用のサブネットを構築してルーティングテーブルを作成し運用する必要があります。

私の環境では、サブネットを255.255.255.192で分割し、192.168.1.1~192.168.1.64までを通常のインターネット通信や宅内LAN用に割り当てて、192.168.1.65~192.168.1.128までをEuconプロトコル用に割り当てました。
サブネットで分割してrouteコマンドでWAN側ゲートウェイとの通信をWiFiアダプタに送り、このルーティングのメトリック値を下げておくことで、Eucon用のサブネットにWAN側のパケットが混線してくるのを防ぎます。

私の場合は自分に若干の知識もあるので何とかしますが、一般的なユーザーの場合、普通はお手上げだと思います・・・。
この辺について一切マニュアルなどでは触れてないあたり、どう考えてもEuphonixは一般ユーザーにはあんまりオススメ出来ないようにも思います。



category: Protools関連

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