とある音屋の日常 「C3PROJECTスタッフBlog」

サウンドエンジニア、サウンドデザイナーとしてレコーディングからPAまで音の仕事ならなんでもおまかせC3PROJECTの日常。

映像と音響効果の一致について考察する。 

私はテレビではドキュメンタリーものが大好きで、特に世界大戦などの戦史などを扱った硬派な作品がお気に入りです。

今回、太平洋戦争当時の海戦を扱った映像の音響効果とMAをすることになり仕込んでいるのですが、太平洋戦争当時の記録映像は音が無い、いわゆる「サイレントフィルム」が多く、そこに音響効果として音を付けていっております。

太平洋戦争当時の記録映像は当然白黒が圧倒的に多く、画と音は別記録です。 音がある映像もありますが、当時の録音はようやく1938年に磁気テープが開発されたばかりという頃。 当時の記録映像、例えばヒトラーの演説記録映像などを見ると分かるのですが非常に音がローファイです。なんとも言えないナローで歪み気味のいかにも古臭い音です。

▼参考資料映像 Adolf Hitler - Speech (1933)




ちなみに磁気テープの開発はドイツで実用化されたわけだが、これはナチス、即ちヒトラーのプロパガンダを広く宣伝するための手段として精力的に研究開発した結果だと言われている。 磁気テープだけのことではなく、NEUMANNやbeyerdynamic、SENNHEISER、AKGなど名だたるマイクの名門がドイツに多いのもナチスが当時最新の映画・録音技術をプロパガンダ利用に熱心だった影響が大きい。


それはさておき話を戻して・・・。

大戦当時のサイレントフィルムに現代の録音素材で音をつけると、音だけがワイドかつクリアなので画と音の質感があまりにも乖離してウソ臭くなる(・・・ような気がする。見る人の感性なので個人差が有ると思うが、僕は若干違和感を感じる。)。

ドキュメンタリー番組を構成する上では、伝えるべき部分さえ伝わってくれれば、当時の記録映像に付く音響効果が真にリアルである必要というのは全くないと思うのだけど、違和感を感じるよりはサラッと聞き流せる自然さが欲しいなと思ったので、現代のクリアでワイド音をあえて古臭くナローでローファイにしてみた。

この時、単にEQなどのフィルタで各成分を削ぎ落とすだけでなく、当時の録音技術背景を考えて作ってみるのがコツ。(というか自己満足だろうか・・・。)
当時の音声記録媒体は蓄音機などのカッティングか、当時実用化されたばかりの磁気テープ。どちらにしてもS/Nはそんなに良くなくダイナミックレンジも狭い。マイクやプリアンプの性能もまだそんなに高くなく、録音/再生時の変換効率や特性の結果どうしても1KHz~2KHzあたりの中域にエネルギーが集中する。先のヒトラー演説映像にも写ってるけど、ヒトラーマイクとして有名なNeumann CMV3 などの中域に寄った音質のマイクが主流。スピーカーの特性も効率重視のスコーカー。当時は真空管で感度の低いプリアンプで目一杯増幅して、リミッティング回路でぶっ叩く。かなり荒っぽい初期の録音技術を考えながらEQとアンプシミュレーター、リミッターを組み合わせてみた。


▼SANSAMP、iZotopeVinyl、SlightlyRudeCompなどでフィルタリングの図
WS000005.jpg


とりあえずプリアンプでの真空管歪み感を再現するためにSANSAMPで歪ませて、その後EQでざっくり処理。S/Nの悪さとナロー感のためにiZotopeVinylをかませて最後にえげつない系ローファイコンプのSlightlyRudeCompをかませてみたのが以下の結果となった。なかなかいいかんじで当時の古臭い感出てるでしょ?


▼サイレントフィルムへ音響効果 (フィルタなし)


▼サイレントフィルムへの音響効果 (フィルタあり)



この設定で音を通すと何でもかんでも1940年代の音になってしまう強力さ。ためしに手持ちの適当なナレーションを通してみたら戦時中の大本営発表放送みたいになってしまいました(笑)


・・・と、そんな事で喜んでるだけでなく、音屋としてはここで音響面だけでなく、作品を俯瞰的に見た場合に本当にこれでいいのかを考える必要もあると思う。

というのは、画と音の質感が一致したことと、関わっているドキュメンタリ作品としてそれがベストなのかというのは別次元の問題だったりする。作品の意図するところをよく汲んで音をつけなければいけない 「音響効果」 として、「注意をひくべき音、注意をひいてはいけない音」を取捨選択するのが肝要だと思いますが、先から話題にしている「違和感」というのも、上手に使いようによっては視聴者の注意を引き付ける武器なのだと思います。 ここぞという時にナローで古臭い音を突っ込むより、あえて画と音との時代的一致がなくても上手に現代的な鮮烈な音を入れてあげることで視聴者の意識を喚起することもサウンドデザイン的な提案だと思いますがいかがでしょうか。

単にリアルを追求するだけでなく、作品の意図を的確に掴み、視聴者の心に届く音響効果をデザインするのもC3PROJECT の仕事です。 ドキュメンタリーばかりでなく、アニメ、ドラマCD、などのアフレコ、MA、音響効果なども一貫してお受け可能です。ぜひともお気軽にご依頼下さい。皆様からのコンタクトお待ちしております。


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category: 音響効果・サウンドデザイン

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