とある音屋の日常 「C3PROJECTスタッフBlog」

サウンドエンジニア、サウンドデザイナーとしてレコーディングからPAまで音の仕事ならなんでもおまかせC3PROJECTの日常。

演劇音響とはどうあるべきなのか? 

わたくし、音屋の端くれではありますが、実は音に関しては学校で習ったことがありません。

専門学校に行ってもいないくせにPA、放送、アフレコ、MA、音楽・・・といろんなサウンドに関わっていますが、その全ての分野で、現場で先輩技師の仕事ぶりを盗み見て真似たり、自分で実験し、感じて、試して、失敗してという試行錯誤をして技術を体得してきました。たとえ同じ教えを請うても、同じ音響の専門書で勉強したとしても、エンジニアが10人いれば各人の感性が作り出す音は十人十色。私の出す音は、私の中の「良い音」という基準に沿った音でしかありません。

この7月にそんな自分の音をみなさんに生で聞いて頂く機会ができました。僕にとってはある意味とても挑戦です。

ってなわけで舞台音響をやることになり、影ながら舞台にお力添えすることになっております。

そんなこんなで舞台音響のサウンドデザインを考えていて、自分が観客として今まで見てきた舞台の音響を思い返した時、意外と舞台におけるPAが演劇をブチ壊していたことに気付いたわけです。


劇団四季や宝塚歌劇団のような観客数も数百~千人単位の公演であれば、観客とステージの距離も遠く、ステージ上の肉声が直接観客の耳に届くことはほとんどなく、劇伴、効果音、そして役者の声を含めた全ての音がPAによる拡声となります。

ところが観客が数十人から多くても二、三百人程度までの劇場空間では、劇伴、効果音にこそPAを入れたとしても、役者の声にPAを入れることはなく、彼ら役者は肉声で観客へと対峙するのです。

しかしこの数十年、キャパ数百程度までの演劇空間に現れた「PA」という技術のせいで、人類有史から続く小規模演劇空間の完成度が大きく崩れたと思うのです。


   「 肉 声 で 伝 え る 。」


それはまさに演劇の原点であり基本だと思います。

そもそも電気のなかった時代にも舞台演劇は存在していて、PA無しで人々連綿と何かを伝え続けていました。
つまり演劇という人類の長い歴史の中の文化に、ぽっと出のPAという技術が入り込んできて、文字通りその場の空気をかき乱しているように思います。


ここからは情緒的な書き方をやめて音響技術的な書き方をしていきますが、キャパ数百程度までの演劇空間で、役者である人間の肉声と、電気的PAを通した劇伴や効果音が「馴染まないまま」音響的に飽和してしまい、本来演劇台本が作り出すはずの世界観を狂わしてしまっていると思うわけです。 役者がせっかく作り出した演劇空間に、機関銃のような無作法な凶器的PA音響が割って入ってテロを起こしてるような舞台音響の多いこと多いこと。

こうした小中規模の舞台音響では、役者の肉声に覆いかぶさって、PAの存在が露呈するようなオペレーションをするのはご法度なんじゃないの?とC3PROJECTは思うわけです。肉声や生音を邪魔しない、ささやかで、自然なPAこそが命だと思うわけです。スピーカーの存在が音でわかってしまったら、それはもう失敗だと思うのです。

そこで私は思うのですが、こういう空間でこそマルチチャンネルサラウンドが役に立つのでは?ということ。
別に舞台に5.1chをおく必要はないと思いますが、L・C・Rの3chや、L・Lc・Rc・Rの4chによるPAを取り入れ、なおかつ全てのスピーカーの指向性を観客に対しディフューズ(間接・拡散)するように設置するわけです。

この構想でPAシステムを組むなら、予算さえあればソリッドアコースティック社のSIKKIMみたいな多面体スピーカーなんかが理想的なPA機材となるのだけども、もちろんそんな機材がなくても、理屈さえ分かっていて求める音の理想像がブレさえしなければ、いくらでも可能なことだと思うのです。

sk_honda_03.jpg

たとえば、PAの基本をあえて曲げて、スピーカーのポーラーを客席方向へ向けないこと。あえてスピーカーの指向性をはずして、直接音と間接音の割合をコントロールすることでPAの存在を目立たなくする。その方法は高さであったり、水平/垂直の角度であったり。直接観客の耳を狙わず、指向性をはずした先で音が拡散し、インスタントなサラウンド環境を作ることが出来る。音源の位置が目立たなければPAの押し付けがましい音も自然に聴こえるはず。もちろん力強いパンチの有るPA用のセッティングも用意して、適材適所で使い分けることでその音場をコントロールしていきたい。


さらに空間系エフェクトを積極的につかって、音浴効果を出して観客を引き込んだり、強い音はリバーブやディレイで上手に拡散させて、PAの利器で積極的に心理的な訴求をしていく。


もちろんどれもこれもが予算の制約、物理的な制約で出来るわけではないが、工夫次第で多くは可能なことだと思う。
演出と音響とのすり合わせさえうまくいけば、今回担当させてもらった朗読会では、小劇場だけども驚くほどいい音空間を提供できるんじゃないかと今からワクワクしている次第である。



・・・もっとも原理的に考えれば「音響的に成功だった!」と私が自分で胸をはれる条件は、PAという音の押し売りで、観客に何も売りつけられずに帰られてしまうことこそが真の「成功」というのが、どこかやるせない仕事で切ないところなのだが。。。(笑)

category: 日々の雑感

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