とある音屋の日常 「C3PROJECTスタッフBlog」

サウンドエンジニア、サウンドデザイナーとしてレコーディングからPAまで音の仕事ならなんでもおまかせC3PROJECTの日常。

本当に必要なモノ 

音の仕事というのは、映像よりも写真に近い部分があるように思う。

というのも、機材にこだわることが映像では選択肢が少なくて限られるのだが、写真ではカメラ本体はもちろん、豊富なレンズ、フィルム、現像方法、フィルターや光源でリアルタイムに味を付けることが常識的に行われているあたり、非常に音と感性が似てくるように思う。
もちろん映像でもそういうことは出来るし、そういう手段がないわけではないが、映像機器は音響と比べると一つ一つの単価が高く、選択肢も多くないので、比較的ポスプロでのカラコレや編集、VFXに頼る部分が大きいように思う。


余談だけど、写真と音でどこがどう対応するのか考えてみた。
カメラ本体=ミキサー卓、レンズ=マイク、フィルム=マイクプリ、現像=EQとかコンプとか、そんな感じに思う。

ハナシを音に戻そう。

私は機材トークは大好きだが、決して僕自身、機材信奉者ではない。 
機材がなければ無いなりの工夫と技術で対応します。

・・・が有る程度のレベルへ安定して完成度を持っていくためには機材を選んだほうが良いと思うようにこの1、2年で思うようになった。 機材で楽に良い音を得られるのなら用意したほうが良いとはっきり思うようになったわけです。

誤解ないよう断るとすれば「楽に」というのは、苦労したくないとかの怠けでは無くて「プロとして安定した質を短時間でも出す」という意味。コストダウンの嵐で誰でも手に入るようになった半分民生機のような凡庸な機材ででも、有る程度似たようなところへもっていくことは出来る。
しかし、そのためには本来必要ない労力や時間、試行錯誤は避けられず、安定した品質を維持できないのは必定。であれば品質は破綻しているといえる。
そうならないためにプロとして機材を選ぶことは、「ほどほど」に重要だと思うのです。そして必要なのは応用力であって機材ではないと考えています。


ここから先は書いておいて無責任なハナシだけど本当に個人の雑感でしかないチラ裏話。

音をいじる時に必ず使うのが、EQとコンプ。

昨今はS&R誌の影響でやたらとビンテージ機材とかビンテージの復刻機材が流行っているが、そんなにいうほどビンテージが制作上の解決策かといえば私はそうは思わない。本当のビンテージ機材は経年劣化でヘタってくる部分のメンテナンスや、それに伴う費用、それ以前にメンテ用の部材調達すら困難であったりして本当にめんどくさいものである。

かといって最新のデジタル機材がベストな解決策とも思えないが、少なくとも最近のモデリング技術をつかったDSP処理やプラグインで音に不満があるということは個人的には無い。

そしてアナログとデジタルで音の優劣について語ることもナンセンスだと思う。要は音が良いように満足いく形で処理されればそんなものどっちだって良いのだから。

結局のところプロは音が同じなら出来上がるまでの時間が短いほうが良い世界なので、ビンテージだろうが、デジタルだろうが、良いものは適材適所に配置して、そういったものをバランスよくシステムビルドしたスタジオで作業するのが最も賢い方法だといえるのではないでしょうか。


個人的に気に入っているのはEQではAVALON VT737やAD2055。
他のEQではNEVEだろうがFocusriteだろうがギスギスした音にしかならない高域ブーストを、スーッ・・・と空気感だけ伸ばしてくれるのは魔法としか言いようの無い機材です。しかも聴く限りどれだけ過激にブースとしてもQの裾野や頂上で位相が乱れるような気配はまったく無いし、使い方次第でヒスノイズ無く空気感を増幅できます。原音に含まれない高次の周波数を魔法で作り出してるんじゃないかと思うほど。特に映画などで役者に仕込んだワイアレスマイクでこもった音を処理するときに絶大な威力を発揮してくれます。

僕はEQに関して以前は「何を使っても大差ない」と思っていたのですが、やはり機材を選んで得られる音の変化は大きいものです。高域処理に限定していえば、たとえアナログビンテージのNEVEだろうがAPIだろうが、Protools標準のDigiRack7BandEQプラグインだろうが、結局大差ないと実際使っていて思います。・・・がAVALONのEQだけは本当に別格で、この空気感だけはヤミツキになります。
逆に低域処理の場合はNEVE1073が信じられないほどイカシたサウンドをメイクしてくれるので低域をいじる際のファーストチョイスになりました。
その一方で通常作業のファーストチョイスはDigiRack7BandEQプラグインだったりします(笑)結局使いやすくて狙った音が出れば何でも良いのです。


コンプではTUBE TECH CL1Bや、NEVE VR1コンソールのコンプモジュールが使いやすく音もうまくまとまるので好んで使います。CL1Bは低レシオで上手に使うと音の細かい部分のバランスを変えることなく元気に音像を大きく前に出してくれるので、聴感上のボリュームを上げたいマスタリングや、マスターコンプに良く使います。
一方NEVEのコンプは、ピークの激しい音でも、塩梅良くピークを取り除いてくれるのでステムミックスなどにグループで挟んでおくとミックスが安定するので好みです。

コンプの定番、UREI1176もファーストチョイスとしては使いますが、最近の自分の使い方としては、時間の無い現場でクライアント立会い・・・という急ぎの場面で、四の五の考えずとりあえずモニターに挟んでおくとみんな安心(笑)・・・みたいな使い方に変化してきました。要はシンプルで設定も決めやすいし、挟んだ効果も容易に想像がつくので使いやすいからそういう使い方なのですが、1176の味が強すぎてどうやっても1176の泥臭い音になってしまうので、時間があるなら他の機材を使うので、以前ほど自分のファーストチョイスとしての機会は減りました。


長々書いておいて、結局のところ自分のスタンスとしては「今ある機材で最高の音を」。これに尽きるわけです。音の黎明期に先輩たちがそうしてきたように、我が耳を信じ、基本に忠実に、時に大胆に。

音は誰にでも触れるようになったけども、誰にでも微笑むものではないと僕は思っています。

category: 日々の雑感

thread: 特殊な仕事 - janre: 就職・お仕事

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